第四章
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第四章
「絶対にね。ビルマのこともね」
「覚えててくれるんだね」
「忘れないよ。だからまた何時かね」
「何時か?」
「また会おうね」
こうだ。アウルに話すのだった。
「何時かまたね」
こう言ってだ。身体を屈まさせてだ。
そうして右手を差し出した。小指を曲げて。
「約束に」
「約束に?」
「指切りしようか」
微笑んでだ。こうアウンに言うのである。
「今からね」
「指切り?」
「日本じゃね。約束する時にこれをするんだよ」
アウンに対して説明する。
「小指と小指を合わせてね」
「それで約束になるんだ」
「だから。約束しようか」
「うん、じゃあね」
アウンも微笑んでだ。そうしてだった。
自分の小指を出してだ。そのうえでだ。
小指と小指を合わせた。二人の小指を。
それを約束としたのだった。次の日にはもう鈴木はビルマを去っていた。
やがて戦争そのものが終わった。日本軍は去りビルマはその後で悲願の独立を達成した。その彼等はだ。
独立してから。こう話すのだった。
「あの曲よかったな」
「ああ、いつも聴かせてくれたよな」
「確かに厳しくて。すぐに殴ってきたけれど」
「俺達のことを真剣に考えてくれたな」
「公平だったな」
「真面目だったな」
日本軍のことをだ。思い出して話すのだった。
そしてだ。その曲をだった。
「俺達もかけるか」
「ああ、パレードの時にな」
「パレードの為の曲だしな」
「それだとな」
彼等はそれぞれ言ってだ。そうしてであった。
軍艦マーチを独立記念日のパレードにかけるようになった。ビルマの言葉で歌ってだ。しかしだ。
アウンはだ。大人になってもだ。いつもその歌を日本語で歌っていた。それを聞いてだ。周りがこう彼に対して尋ねるのだった。
「日本語で歌うのかい」
「またどうしてなんだ?」
「ビルマの言葉じゃないのか」
「うん、ちょっとな」
はにかんだ様な微笑みでだ。彼は応えるのが常だった。
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