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異なる物語との休日〜クロスクエスト〜
休日のB
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けがつくわけもない。

「それでは用意……スタート!」


 

 三分後。




「馬鹿な……俺に番が回ってくる前に全て取られただと……ッ!?」
「完全記憶能力も、使う前にゲームが終わっちゃったら意味ないよな」

 並べられた五十二枚のカードは、全てセモンの手の中に在った。

 もともと、セモンは直感だけは野生動物並みに優れている。加えて、半年前の《白亜宮》騒動以後感覚が鋭敏になってしまったセモンは、直感がほぼ予知に近しいほど強化されてしまっている。その精度たるや、頭上から降ってくる鉢植の存在を、落下三十秒前から知覚できるほどだ。

 当然――――トランプ五十二枚のどれが何のカードなのかを察知するなど、少し気を張れば可能になってしまう。

「いやー、まさかこうなるとは思わなかった。すげぇなセモン」

 雷斗はけたけたと笑う。それに対するセモンは苦笑。
 
「まぁ、戦闘能力はみんなより低いからな。こういうサブ的なところで特化してるんだ。……というかそもそも一対一でやったら意味ないだろ」
「畜生気付かなかった! 図ったなセモン!」
「キミの生まれの不幸を呪うといい」
「何でその返し!? ……って、え?」

 雷斗の台詞に応答したのは、セモンでも、この場にいる全員でもなかった。

 《ソレ》は、いつの間にか部屋の中にいた。

 聖堂教会の聖職者が着用する修道着(カソック)と、法被型の陣羽織を足して二で割ったような黒い服。チェーン状のネックレスの先には、二本の鎌と《Y》の字が交差した奇妙な文様をかたどったストラップ。

 髪の毛は黒と茶色と灰色と、なんでも入り混じった長いくせ毛。目つきはセモンの良く知っている誰かによく似ていて、表情もそっくりだ。

 青年の姿をした《ソレ》は、ふてぶてしい笑みを浮かべていた。

「「「……《天宮陰斗》……ッ!!」」」

 一部の人間が、その人物を見て絶叫した。だが、その名前はセモンの知っている人物のモノだ。そしてその人物は、こいつではない。

「いや違う……お前、シャノンじゃないな。誰だ!」
「辛辣だな、セモン君。僕は彼と非同一でありながら同一の存在であるというのに」

 その言葉で気付く。

 青年が、天宮陰斗(シャノン)とそっくりな目つきと、表情をしていることに。

「僕は《星龍明日華》……アスリウ。《エゴイズム・ゾーネン》よりもずっと前から存在する《触覚》だ。だが安心したまえ。本来ならばキミ達という《セカイ》ごと『閉ざす』ことも可能な僕だが、べつにそんな事をしに来たわけじゃない」

 ゆらり、と形容すべき動作で立ち上がった《アスリウ》は、一同を睥睨すると、にやにや笑いから、急きょとして奇怪な営業スマイルに変貌すると
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