第三章
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第三章
「もっと。もっとね」
「そうかい。それだったらね」
「うん、また聴くね」
この時に聴いてそうしてだ。彼はこの軍艦マーチという曲が好きになった。海軍は何かあるとこの曲をかける。それが彼にはとても嬉しかった。
彼は自然とだ。軍艦マーチを自然に口ずさむようになった。曲だけでなくだ。日本語の歌詞でもだ。自然と口に出すようになっていた。
それを聴いてだ。鈴木も笑顔で彼に言うのだった。
「本当にその曲が好きになってくれたんだね」
「何か自分でも歌っても」
「いいだろう?」
「これが日本の海軍の曲なんだ」
「そうだよ。他にもあるけれどね」
「そうだね。けれどこの曲が一番好きだよ」
こう話すのだった。鈴木に対して。
「だからこれからもね」
「歌うんだね」
「ずっと。ずっと歌うよ」
そのことをだ。鈴木に話した。
「ビルマが独立、だったよね」
「うん、独立だよ」
「独立してからもずっと歌うよ」
また鈴木に話す。
「ずっとずっとね」
「有り難う。それじゃあね」
「うん、ずっとね」
こんな話もするのだった。そしてだった。
彼は軍艦マーチを自分でも歌っていた。その間に戦局は変わっていた。
日本軍はビルマでも戦局が悪化していた。鈴木も出撃することが増えていた。そしてだ。
その中でだ。鈴木はだ。こうアウンに言うのだった。
「えっ、この国から出るの」
「台湾に行くことになったんだ」
鈴木は残念そうにだ。アウンに対して話した。今二人は田んぼの中を歩いている。二人並んでだ。まだ緑色の田んぼの中を歩いている。
「そこにね」
「台湾なんだ」
「悪いけれど。だから」
「御別れなんだね」
「うん、そうなるよ」
寂しい顔でだ。アウンに話す。周りには虫達が飛び交っている。暑いビルマの夏の中での話だった。
「もうこれでね」
「鈴木さん」
アウンから彼に言った。
「僕ね」
「どうしたんだい?」
「あの歌忘れないよ」
彼に言うのはだ。こうしたことだった。
「絶対に忘れないから」
「軍艦マーチをかい?」
「うん、忘れないから」
彼の顔を見上げてだ。そのうえでの言葉だった。
「絶対に忘れないから」
「そうか。覚えててくれるんだね」
「そうするからね」
切実な顔でだ。彼に話すのだった。
「約束するから」
「有り難う。じゃあ頼んだよ」
「鈴木さんのことも忘れないから」
そしてだ。彼もだというのだった。
「それに日本のこともね」
「我が国のこともなんだ」
「そう、絶対に忘れないから」
鈴木の顔を見て。話していく。
「何があってね」
「じゃあ。僕もね」
「鈴木さんも?」
「アウンのことを忘れないよ」
微笑みを彼に見せてだ。そのうえでの言葉だっ
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