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クルスニク・オーケストラ
最終楽章 祝福
終-1小節
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 人の死後には二種類ある、とマクスウェル姉妹は言った。《カナンの地》で循環するか、冥界に堕ちて永劫さまようか。

 あの日、時歪の因子化したジゼルは、当然《カナンの地》の魂の循環に乗ったんだと思った。

 “ジゼルはこの地のどこにもいない”

 オリジンはただ逢えないことを比喩的に言ったんだと解釈した。
 でもそれが違ったら? 「この地」が「カナンの地」だったら?
 カナンの地に魂がいないのなら、どこへ行った?

 これに対して手がかりをくれたのが、ルドガーの仲間の一人の、新聞記者の少女だった。

 その子は、魂の循環を司る《カナンの地》とはまた違う死後の世界を、文献を引っくり返して調べて、俺たちに教えてくれた。

 ――リーゼ・マクシア。ザイラの森の教会。かつて冥界の王プルートをマクスウェルが封じたという伝説がある地。




 リドウとヴェルにアイコンタクトで確認。俺は教会のドアを開けて中に踏み込んだ。

「っ、さむ……っ」
「どうやらまだこのブッサイクな防寒着は脱げないみたいだね」

 建物の中にいるのに息が白い。暖房――なんて物はあるわけないか。リーゼ・マクシアだしな。

「「ようこそ、永劫の大精霊の社へ」」

 っ! 講壇の上に女が二人。声をかけられるまで気配が読めなかった。まるで今唐突にここに現れたみたいに。

「私はティース」
「私はパテル」
「「この教会の管理者です。今日はどういったお話をお求めで?」」


 “教会には巫女さんが二人います。その二人に気をつけてください。そいつらこそが――”


 ふり返る。3人で肯き合う。あの子がくれた情報通りなら、こいつらは。

「冥界の王プルートに会いに来た。お前たちがそれだな?」

 ティースとパテルは同じ造作の顔をきょとんとさせて、それから、妖艶に笑った。

「知っているなら話は必要ないわね」
「そう。私たちこそ」

 女たちは互いに滑るように近寄り――交ざって闇が生じた。

「「我らにして我。死すら超える、永劫の大精霊にして冥界の王」」

 晴れた闇からどしんと一歩を踏み出したそれは、「鬼」だった。冥界の「王」を冠するだけはある。禍々しい光背、荊で編んだ両刃の剣と、突起だらけの盾。

 ヴェルはなるべく後ろに、俺とリドウでいつでも応戦できるよう構えを取る。
 武器はまだ抜かない。今から俺たちはこいつに「交渉」するんだ。心証が悪くなる真似は避けたい。

「これが冥王プルート……」
「ハッ。イイ趣味してんじゃん。これなら良心の呵責なくやれるな」
「お前に良心が備わっていた新事実に驚きだ」

『おーおー、勢いづいとるやんけ、クルスニクの末裔。オリジンの審判のうなってテンションハイんなっ
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