第十四章 水都市の聖女
第五話 悪魔の門
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見ながらブリミルは不思議そうな声を上げた。
「君の鎧は丁度心臓の辺りに前後ろ共に穴が空いていた……なのに、穴から見える君の胸には傷らしい傷もない。鎧の破損状況を見れば、丁度心臓が貫かれていた筈なのに……何でかな? ぼくの知らない何かの魔法?」
「……さて、な。残念ながら俺にも理由は分からん、な」
士郎は肩をすくませながら左手の掌の甲に刻まれた令呪をチラリと見る。
「まあ、今はそれよりもまた別の事が気になるんだが」
「別の……? それは?」
ブリミルが視線だけで促してくる。士郎は軽く頷きながらそれに乗った。
「アレは、何だ?」
「アレ……あれって……何のこと?」
腕を組んで首をかしげて見せるブリミルに、士郎はスッと目を細めた。
「……李書―――“ヴァリヤーグ”とは一体何だ?」
「ヴァリヤーグ? え? ヴァリヤーグたちを知らないのっ!?」
―――待て……ヴァリヤーグたちだと?
知っていて当たり前の常識を訪ねてくる者に対して向けるような戸惑いを含んだ視線を向けてくるブリミルに、士郎は反射的に問い詰めようとするのを押さえ込むと、代わりに深く息を吐き出した。
「……ああ」
「へぇ〜……今この時代に“ヴァリヤーグ”たちを知らない人がいるなんてね」
ブリミルは大げさに両手を広げると、ゆっくりと頷いて見せた。
「恐ろしく強い悪魔みたいな奴らだよ。で、サーシャの話からすると、その中でも君が戦ったのは“朱の悪魔”とか“見えない悪魔”と最近恐れられている有名な奴だね」
「……“見えない悪魔”?」
「どっちも君が戦ったヴァリヤーグの通り名だよ。幸か不幸かぼくは何度かあいつが戦っているのを見たことがあるんだけど……あれは凄いというよりも酷かったね。あのヴァリヤーグの一撃を受けて体中から血が吹き出して死んじゃった人を見たことがあるんだよ。でも、それに何より厄介なのは、誰もあの悪魔の接近に気付けないって点だね。そう、まるで透明になっているかのように……気付けば近くにいる」
「それは……厄介だな」
「厄介どころじゃないよ」
苦虫を百匹纏めて噛み潰したかのようにブリミルが苦々しく顔を顰める。
確かに、あの男に勝てる可能性があるとすれば、近付かせる前に魔法で遠距離からの攻撃以外他に手はない。なのに、知らない内に間合いに入られるとすれば厄介どころの話じゃない。
「それで、その“ヴァリヤーグ”について何か分かっている事はあるのか?」
「いや、それが全くと言っていいほどないんだよ」
深いため息と共に顔を横に振る。
「何時から、何処から現れたのか。何の目的を持っているのか。何をしているのか……何でもいい。何か知らないか?」
「そう、だね。
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