第十四章 水都市の聖女
第五話 悪魔の門
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たことを信じるというのか? 普通ならば病気を疑われるな、精神か脳の……。
思わず重いため息が出そうになるのを片手で額を抑え押しとどめると、期待に瞳を光らせているブリミルに向かって顔を振った。勿論、縦ではなく横に、である。
「……残念ながら期待に添える事は出来ない」
「っえ、ええっ!!? な、何でだいっ!?」
両手で顔を挟み、ブリミルはアッチョンブ―――悲鳴のような叫び声を上げた。
「少々込み入った事情があってな。それ以前に、俺はここが何処かも知らないんだが?」
「え? あ、ああ。そうだね。君をここに連れてきた時は死んだように気絶してたからね。まあ、移動にはぼくの魔法を使ったから、起きててもここが何処かなんて分からないだろうけど」
「……そう、か。で、すまないがどうして俺はこんなところにいるのか聞いても大丈夫か? 最後の記憶があやふやでな」
「ああっ! そういえばお礼を言い忘れてたよっ!? 全くぼくは何時も抜けていて困ったものだねっ! 君がヴァリヤーグと戦ってくれたおかげでサーシャが助かったんだっ! 本当に感謝するよっ」
勢いよく頭を下げたブリミルの頭頂部にある渦巻きを見下ろしながら、士郎は再度ぐるりと部屋の中を見渡した。
「いや、それは別に構わないが。そう言えばサーシャの姿が見えないが、彼女は?」
「ああ、彼女は今寝ていると思うよ。ま、それも仕方がない。サーシャはついさっきまでずっと君の傍で看病していたからね。三日も寝ずに看病していたんだ、全く無茶するよね。ぼくが魔法の使いすぎで倒れた時なんか『蛮人の看病なんてするわけないでしょ』なんてほったらかしにされたってのに、な〜んでかな?」
「―――待て」
「ん?」
むぅっ、とむくれた顔を寄せるブリミルに向かって右手を突き出す。
「三日、だと?」
「そうだよ。君がここに来てからもう三日だね。いや〜あの時は驚いたよ。やっとサーシャの居場所が分かって、怒られるんだろ〜な〜と戦々恐々しながら“ゲート”を潜ってみたら、君を抱えて泣いているサーシャがいるんだからっ! もうビックリしたのなんのっ! 彼女のあんな姿見たの初めてだったよっ! しかも、ぼくに気付くと直ぐに治療しろって物凄い形相で迫ってくるし。まるで恋人の身を案じる乙女だよ全く」
むぅっ、と顔を顰めてジロリと睨めつけてくるブリミルを士郎は無視して気になる点を問いただす。
「その時俺とサーシャ以外に他に誰かいたか?」
「え、誰か? ……ああ、多分ヴァリヤーグのことだね。まあ、幸いな事に姿は見なかったよ。あの場には君とサーシャの二人だけだったけど…………。でも……シロウはどうして助かったんだろうね?」
「それは、どう言う、事だ」
まじまじと士郎の左胸―――丁度心臓の辺りをジロジロと
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