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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第五話 悪魔の門
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手に同じ文字が刻まれていると聞いた時には俄かには信じられなかったけど、まさか本当だったなんてっ!! そりゃ、ぼく以外にもこの“変わった系統”の使い手

がいるとは思っていたけど、まさか本当に現れるなんてっ!? これは本当に凄い事なんだよっ!!」

 そこまで言うと謎の男は、更に士郎に向かって顔をずずいっと顔を寄せてくる。『近い近い近い』と内心声を上げながらも、別段敵意もなくそれどころか好意を見せて顔を寄せてくる

男に士郎はどう対処しようか悩む。

「だから君の主人とぼくを会わせてくれないかい?」

 『何が』、『だから』なのか士郎が若干イラッ、としながらも大人しく聞き役に徹していると、ハッと何かに気付いたように男は士郎から顔を離した。

「そうそう。そう言えば自己紹介がまだだったね」

 上機嫌に笑いながら男はやっと士郎が知りたかった事を口にした。
 しかし、その時男が口にした言葉により、更に士郎は困惑する事となる。

「ぼくの名前は、ニダベリールのブリミル」

 胸に手を当てながら男は自分の名を名乗る。

「ブリミル・ル・ルミル・ニダベリールだよ。よろしく」
「―――……は?」

 士郎の思考が一瞬空白に満ちた。
 朗らかに笑いながら男が口にした名前。
 それに士郎は聞き覚えがあった。
 なにせほぼ毎日の如く耳にいていた名前であり、本などでも良く見かけていたものでもある。
 “始祖ブリミル”
 そのフルネームで間違いはなかった。
 
 ―――同名の別人か?

 士郎は一瞬そう考えたが、直ぐにサーシャの左手に刻まれていたルーンと、この目の前のブリミルを名乗る男が口にした『ぼく以外にも』との言葉を思い出し、その考えを否定した。

 ―――まさか……本物?

 しかし、それが真実であるならばここは過去であるということ。
 五つの魔法―――その中の一つ。
 信じがたいが、その可能性はないとは言い切れない。
 否定するには自分の経験が余りにもアレであるからだ。
 だが、未だ確証はないため、安易に判断することを士郎は止めた。
 焦りが広がる胸中を押さえ込むと、極めて冷静にブリミルを見やる。

 ―――何処にでもいるような普通の男に見える。
 
 付け加えるのならば、気の優しさと真面目さだけが取り柄の若い男。もしかするとあの人の話を聞かない様子からすると研究者タイプかもしれんな、と士郎は考えながらブリミルを観察する。
 最初聞こうとした質問(サーシャの安否)の前に、聞くべきことが出来たと士郎はブリミルに向き直った。

「―――えっと、あなたは?」
「ん? ああ、俺か、すまない。衛宮士郎だ。少し状況が分からないんだが、俺は―――」
「エミヤシロウ? あまり聞きなれない
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