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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第五話 悪魔の門
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ない状態で許容量を遥かに越えた魔力が世界を巡れば? 今この時も魔力は流れ込んでくる―――過ぎた力は身を滅ぼす―――それは“世界”であってもだ」
「で、でも、そんな事が―――」
「―――ないと、言い切れるのか」
「―――っ、ぼ、ぼくは一体どうしたら」

 士郎に向かって土下座でもするかのように、崩れ落ちがくりと床に手をつくブリミル。士郎は顔を向けることなく唯一の方法を提示する。
 だがそれは―――

「“門”をどうにかするしかない。魔力の流出さえ防げたなら、この世界が滅ぼされる理由は無くなるはずだ」
「む、無理だよっ! さっき言っただろっ! “門”はこの世界の魔力と異世界の魔力で出来てるって。だから単純に考えて、“門”を壊すには一つの世界を壊す程の力が必要なんだよっ!!」
「…………」

 そう―――何よりも最悪なのが、その“門”の頑強さだ。
 こちらと向こうの世界の魔力により構成された“門”は、言ってしまえば一つの世界そのものと言っても良いだろう。
 そんなモノを破壊する事など不可能。
 ならば“門”であると言うのだからその扉を締めれば良い。
 だが、それも―――。

 士郎の思考は、追い詰められ血が頭に上った者特有の苛立ち混じりの怒声により途切れることとなった。

「そ、それに何で君がそんな事を知ってるんだよ! そ、そうだ、やっぱり今のは嘘なんだろっ!」
「……簡単だ―――俺がこの世界の人間ではなく、奴らが来た世界の人間だからだ」
「え?」
「つまり、俺は―――お前が滅ぼそうとしている世界の人間だ」
「―――ッ?!」

 士郎の刃の如く鋭い視線に睨めつけられ、ブリミルが息を飲んだ瞬間―――

「―――族長っ!!」
「「―――ッ!?」」

 テントの中に一人の男が飛び込んできた。
 勢い余って床に転がった男は、立ち上がりながらブリミルに向かって汗だくの顔を向けた。随分と急いで来たのだろう、顔は汗に濡れ息は荒い。だが、その様子に反し顔色は病的にまで青かった。
 その理由は直ぐに分かる事になる。

「ど、どうしたんだい?」

 ブリミルの質問によって。
 男はブリミルの言葉に、一つ息を吸い込むと、口に出すのも恐ろしいとばかりの姿でその名を口にした。 

「や、奴が―――“ヴァリヤーグ”が現れましたッ!!?」
「奴? ―――ッ!? まさ、か」
「あの見えない―――“朱の悪魔”が村にッ!!」
「「―――ッ!!?」」



 “世界”を救うために“抑止力”として召喚されたであろう“守護者”にして。



 長き中国の歴史にあってその頂きに立つ魔拳士と呼ばれた―――悪魔を。



 


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