第十四章 水都市の聖女
第五話 悪魔の門
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ブリミルは笑っているかのような奇妙に引きつった顔を横に振ろうするが、ガクガクと身体が揺れていたため頷いているようにしか見えなかった。揺れているのは士郎が身体を揺らしているのではなく、ブリミルの身体自体が震えているからだ。別にブリミルは士郎の口にしたことが全て真実である等とは思ってはいなかった。何せこれでも一つの部族の長をやっているのだ、今日話したばかりの男の言葉をまるごと信じてしまうほど、ブリミルは愚かでも善人でもなかった。
しかし―――自身が類まれな魔法使いであるためか、本能的に士郎の言葉が真実であるとブリミルは理解していた。
虚ろな目で『ありえない、うそだ』とぶつぶつと呟き始めたブリミルから手を離すと、士郎はギリリと歯を鳴らしながら吐き捨てるように言葉を発した。
「何故“抑止力”がいるのかその理由が分かった」
「抑止力?」
「お前たちが“ヴァリヤーグ”と呼ぶものたちの事だ」
「え?」
反射的に士郎の言葉に反応したブリミルに、律儀にも士郎は答えてやった。
「あれらは世界の危機を前に現れ、その原因を排除するために呼び出されるものだ」
「……世界の、危機」
「つまり魔力が枯渇し世界が滅びるのを防ぐために、奴らはその原因を排除するためこの世界に来たという理由だ」
「え、つまり、それって―――」
「―――貴様の話を聞けば自ずと答えは出る。魔力が失われる原因―――“抑止力”はこの世界を滅ぼすつもりだ」
「ま、まさかっ!! そ、そうだ、ど、どうやってだいっ!! 世界を滅ぼすってっ!! 一体どうやってっ!?」
人や国ならばともかく“世界”だ。
モノを壊すというだけの話ではない。
だが、その答えも既にブリミル自身が口にしていた。
「……奴らは魔力が集中する地を破壊していると言ったな」
「そ、そうだけど」
「魔力が集中する土地を霊地と言うが、端的に言えば霊地と言うのは言ってしまえば世界に流れる魔力を調整するためのダムのようなものだ」
「だ、だむ?」
聞き覚えのない言葉に戸惑いを見せるブリミルに、士郎は一つ溜め息をつく。
「―――っ……いいか、世界にある魔力は川のようなものだ。常に流れているものであり、一箇所に溜まり氾濫することもあれば、流れが滞り乾いてしまう事もある。それを防ぐために、世界にはそれを調整するための場所がある。それが霊地―――貴様が言う『魔力の集中地』だ。そしてそこが壊されればどうなる? 一つや二つならばどうにかなるだろう。それこそそういったものは世界中にある。だが、その全てが無くなればどうだ? しかも今この世界には元々あった魔力に加え、別の世界からの魔力も流れ込んできている。調整する事が出来
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