第十四章 水都市の聖女
第五話 悪魔の門
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全て。
格上であることは始めから分かっていた。
勝率が限りなく低いことも、だが、それでも勝率はあったのだ。
そこに、手が届かなかった。
「―――く、そ」
どうすれば勝てたのか?
何をすれば勝てたのか?
『現実では敵わない相手ならば、想像の中で勝て―――自身が勝てないのなら、勝てるモノを幻想しろ』
―――馬鹿がッ!!
ならば一体何ならば奴に勝てるッ!?
想像ですら勝てない相手にどうすれば勝てるとっ!?
刺し穿つ死棘の槍?
射殺す百頭?
無限の剣製?
それで本当に奴に勝てると思っているのか?
……いや、例え奴に勝てる何かがあるとしても、最後にソレを使うのは俺だ。
結局の敗因は俺にある。
どれだけ慎重に精密に詰将棋のように追い詰めたとしても、最後の最後で届かない。
俺が俺である限り奴には勝てない。
俺という存在が―――奴には届かない。
ならば、諦めるのか?
……再び奴と相見えた時、ただ逃げ惑うだけなのか?
そんなこと出来るわけが無いっ!
―――……それこそ馬鹿な話だ。
諦める?
逃げる?
誰が?
俺が?
―――…………舐めるな。
例え奴に勝てるモノがあったとしても、俺が原因で勝てないのならば―――俺は―――
「―――おおっ、目が覚めてたんだね」
「っ」
不意に呼びかけられた声により士郎の意識は現実に引き戻される。
声を掛けられる前に気付く事が出来なかった事に苛立ちを覚えながら、士郎は声の主へと顔を向けた。
「……あなたは?」
「やあやあ少し失礼するよ。とは言ってもここは元々ぼくの家だから何を遠慮するところはないんだけどね。はっはっはっ―――」
「……」
入り口と思われる場所から顔を出してこちらを見ているのは、二十歳には届いてはいないだろう小柄な男だった。癖のない金髪をゴシゴシと撫でながら入り口からテントの中へと入ってきた男は、ニコニコと上機嫌に笑いながら士郎の前まで歩いてくる。男は裾の長いローブを羽織っており、歩を進める度に、地面に着いたローブの裾がズルズルと引きずられていた。
「あ〜その……すまないが―――」
「―――いや、しかし本当に驚いたよっ!」
士郎が顔を上げ目の前に立つ男に再度声を掛けようとするが、それを遮るように謎の男はぐっと士郎に顔を寄せると堰を切ったように話し始めた。
「サーシャに君の左
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