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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第五話 悪魔の門
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 ……高窓から差し込む月の明りが、小さな部屋の中を薄ぼんやりと照らし出す―――



 ……荒い男の呼吸―――風を切る鋭い音―――煉瓦が砕け大地が震える音―――

 
 
 ―――怒り―――羞恥―――恨み―――憎しみ―――



 虎の唸り声の如き低く重い呼気と共に煉瓦が砕かれ、大気が穿ち捩じ切られる異音が響く



 ソレは―――一人の魔人が生まれた日



 憎悪を炎に―――怒りを鉄に―――意志を鎚に―――一振りの剣(一人の魔人)が鍛えられる


 
 一踏み毎に重さが加わり―――一突き毎に鋭さが増し―――一呼吸の度に積み重なる力―――
 

 
 未だその動きには無駄があり―――重さが足りず―――拙さが見える



 しかし、確実に男は、一秒毎に人からかけ離れていく……



 まだ荒く、未熟であり、何もかも足りない―――だが、恐ろしい速度でそれらは無くなり―――男は頂へと登っていく―――



 選ばれた者の―――更に極く限られた者のみが到れる極地へと…………………………


 
 













 




「―――っぐ」

 意識が覚醒すると共に、一気に肺に酸素が送り込まれ―――全身に刺すような痛みが走り苦悶の声が漏れた。背中に感じる独特の感触と匂いに、自分が藁の上で横になっている事を知る。うっすらと開かれた視界は周囲を照らす光に眩み歪んだ像を映し出すだけ。目の奥に走る鋭い痛みに顔が歪み、光を遮るように顔を片手で覆うと、指の隙間から周りを見渡した。

「ここ、は……?」

 火でも電気的な明かりではない光に照らされる白い布の天井。
 自然とかつてモンゴルの遊牧民と一時暮らしていた時の事を思い出しながら、士郎は鉛を飲んだかのように異様に重い身体を起き上がらせる。上半身だけ身体を起こした士郎は、改めて周りを見渡した。木の骨組みに布が張られただけのテントと思われるものの中には、自分がいる藁のベッドの他に、幾何学模様の絨毯の上に日曜大工で作ったかのような粗末なテーブルと机が一式あるだけ。

「俺は、確か―――」

 最後に残る記憶は、(心臓)に突き刺さる冷たさにも似た痛み。
 凶相に顔を歪めた老人の姿。

「―――負けた、のか」

 胸に、心臓に手を当てギリッ、と歯を鳴らす。
 完敗であった。
 手も足も出ない、まさに言葉の通り完全な敗北であった。
 投影を、強化を、宝具もガンダールヴの力さえ使った。
 しかし―――届かなかった。
 近接戦ではなく遠距離から弓でなら、とは考えない。
 結果が
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