第3部 始祖の祈祷書
第9章 宣戦布告
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、一番旧型の小さな艦から、火災が発生したのだ。
「なんだ?火事か?事故か?』
フェヴィスが呟く。
次の瞬間、もっと驚くべきことが起こった。
火災を発生させた艦に見る間に炎が回り、空中爆発を起こした。
残骸となったそのアルビオン艦は、燃え盛る炎と共に、ゆるゆると地面に向かって墜落していく。
「な、なにごとだ?火災が火薬庫に回ったのか?」
『メルカトール』号の艦上が、騒然となる。
「落ち着け!落ち着くんだ!」
艦長のフェヴィスが水兵たちを叱咤する。
『レキシントン』号の艦上から、手旗手が、信号を送ってよこす。
それを望遠鏡で見守る水兵が、信号の内容を読み上げる。
「『レキシントン』号艦長ヨリ、トリステイン艦長旗艦。『ホバード』号を撃沈セシ、貴艦ノ砲撃ノ意図ヲ説明セヨ」
「撃沈?何を言っているんだ!勝手に爆発したんじゃないか!」
ラ・ラメーは慌てた。
「返信しろ!『本艦ノ射撃ハ答砲ナリ。実弾ニアラズ』」
すぐに『レキシントン』号から返信が届く。
「タダイマノ貴艦ノ砲撃ハ空砲ニアラズ。我ハ、貴艦ノ攻撃二対シ応戦セントス」
「バカな!ふざけたことを!」
しかし、ラ・ラメーの絶叫は、『レキシントン』号の一斉射撃の轟音でかき消される。
着弾。
『メルカトール』号のマストが折れ、甲板にいくつもの穴が開いた。
「この距離で大砲が届くのか!」
揺れる甲板の上で、フェヴィスが驚愕の声をあげる。
ラ・ラメーは怒鳴った。
「送れ!『砲撃ヲ中止セヨ。我ニ交戦ノ意思アラズ』」
しかし、『レキシントン』号はさらなる砲撃で、返事をよこしてきた。
着弾。
艦が震え、あちこちで火災が発生した。
『メルカトール』号から、悲鳴のような信号が何度も送られる。
「繰リ返ス。砲撃ヲ中止セヨ。我ニ交戦ノ意思アラズ!」
しかし、『レキシントン』号の砲撃は一向にやむ気配がない。
着弾。
砲撃の破片で、ラ・ラメーの体が吹っ飛び、フェヴィスの視界から消えた。
同時に着弾のショックでフェヴィスは甲板に叩きつけられる。
フェヴィスは悟った。
これは計画された攻撃行動だ。
奴らは初めから、親善訪問のつもりなどない。
自分たちはアルビオンに嵌められたのだ。
艦上では火災が発生している。
回りでは傷ついた水兵たちが、苦痛のうめき声をあげている。
頭を振りながら立ち上がり、フェヴィスは叫んだ。
「艦隊司令官戦死!これより旗艦艦長が艦隊指揮を執る。各部被害状況知らせ!艦隊全速!右砲戦用意!」
「奴らは、やっと気が付いたようですな」
ゆるゆると動き出したトリス
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