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クルスニク・オーケストラ
第十三楽章 聖なる祈り
13-2小節
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ラムを指した。あれが、今のビズリーとどう関係あるんだ?

 分からないでいると、不意にビズリーがカウンタードラムに向かってふらつきながら歩き出した。

「オリジン…俺“個人”の願いを教えてやる……あの数だけ、この拳でお前たちをっ!!」


 ガゥン…ン…!!


 殴った。皮膚も骨も粉砕する威力で。クルスニクの犠牲の数を刻んだカウンターを。

 ビズリーが倒れる。地面にぶつかった拍子に、まるで元から炭の人形だったかのように砕けて。黒煙を上げて。消えた。

 カウンタードラムが回る。999998から、999999へ。

 ふり返ると、ジゼルの手の中からキャンドルスティックは消えていた。

 歩いていく。ルドガーがエルにそうしたように、俺も、ジゼルの前へ。

「全く。本当に世話焼かせな部下だよ――お前は」

 抱き締める。きつく、きつく。骸殻の硬い感触であってもどうでもいい。ただジゼルの生を実感できれば何でも。

 すると、背中に二本の腕が回る感触。

 応えて――くれるのか? お前が、俺に?
 そうか……馬鹿だな、俺たちは。変なルール作って、てんやわんやして、でもそれが楽しくて回り道した。最初からこうしていれば、事態はもっと簡単だったのに。

 体を離す。そろそろ生身のお前に触れたい。もう脅威はないんだ。骸殻を解いてもいいだろうに。
 顔が見たい。あの笑顔が見たい。なあ、ジゼル?

 ジゼルは首を振り、そっと、俺から――離れた。

 ジゼルの目線は、審判の門前に立ち、カウンタードラムを開けたルドガーとエルに注がれている。
 俺たちにはあまりに永い2000年だった。ようやく今日、終わりにできるんだ。
 よかったな。お前が目指してきた「ハッピーエンド」はもうすぐそこ……

 その時、ジゼルの骸殻を覆った白い鎧が砕け散った。

 あらわになった胸部の骸殻から――時歪の因子化の黒煙が噴き上げていた。
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