道化師が繋ぐモノ
[2/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ノなのか、誰かが感じているモノなのか……ゆっくり見極める暇さえ、もう与えられない。
彼は内から込み上げるモノを抑え切れず……笑った。
「クク、あはっ、あははははははははっ!」
からから、からからと大きな声を上げて笑った。
矢を避け、頸を刎ね、人を蹴り飛ばし、武器を弾き……壊れた人形のように笑い声を上げ続けた。
目に見えて怯える敵が自分の手でゴミのように死んでいく……
――なんで……?
返り血の生温さを懐かしく感じて、漏れ出たハラワタを踏み潰す感触も知っているモノで……
――なんでだ……?
死にたくない、死にたくないと涙を零しながら向かってくるヒトも、見慣れたモノだと分かってしまうも……
――誰か教えてくれよ……。
笑いながら、自然に、はらはらと零れ落ちる涙の意味は全く分からずに……
――なんでこんなに、嬉しいんだ……。
無意識の内に震える声で紡いでも、答えてくれる人など側には居らず、
――なんで……こんなに、哀しいんだよ……。
自分が自分で無いままに、ただ人を殺す事が嬉しくて哀しくて、張り裂けそうな心を理解出来ない。
白い剣閃は紅華を咲かせていく。その度にジクリと心が疼く。
真黒いブーツが敵の骨を砕く。その度にビシリと心が痛む。
罪悪感が感じられない。人を殺す事に怯え続けていたのに、存外呆気ないモノだった。悲哀の感情が罪悪感から来るモノかと思っても、それでは無いと違和感だけがあった。
自身の心に浮かぶ感情の理由が理解出来ないから、彼はただ、敵を倒すだけの行動を行い続けた。
しかし同時に……居心地の良さも感じている。
自分が敵を殺す度に、殺される攻撃を向けられる度に、彼の心には安息に広がっていった。まるで戦場こそが住処であると、そういうように。
綯い交ぜになった心とは別に、思考は巡る。如何に敵を効率的に殺すか、この戦場を生き抜くか……自分が死んだら、全てが終わる。
化け物だ、と誰かが叫んだ。ああそうか、と彼は一つだけ理解出来た。
この戦場を安息の住処として感じてしまう自分は、人としての線引きさえ外れてしまった自分は、きっと化け物に違いない、と。
――なぁ、誰か教えてくれ。
びしゃり、と頬に掛かった血しぶきを舐めてみた。生温い鉄味の液体を舌に乗せると、自分はこの舌触りを知っていると感じる。けれども何時、何処で、どんな事を考えてコレを知ったのか思い出せない。
――なぁ、誰か思い出させてくれ。
踏み砕いた頭蓋骨の感触が足の裏から脳天まで響き渡る。ぐちゃり、と飛び出た目玉も脳漿も、既視感を覚えるだけ。誰を、誰と、どうやって、どれだけの人数をこうして殺して来たのかも思い出せない。
――誰か……俺
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ