第二章
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第二章
「為さねばならぬ何事もじゃない」
「っていうと動くの」
「ここは」
「そう、仕掛けるわよ」
今はっきりと宣言した鈴だった。
「絶対にね」
「ふうん、何か考えてるみたいね」
「秘策があるのね」
「その通り。秘策は幾らでもあるからね」
こんなことも言うのだった。
「まあ見てなさい。浅原は私がゲットするわ」
「けれどあんた今までそういう経験した?」
「彼氏とかいたことあるの?」
「ないわよ」
何とこう答えるのであった。
「彼女はいるけれど」
「はいはい、彼女はわかってるから」
「とにかくいないのね、彼氏は」
「今までも」
「そうよ。それでもこの時の為に考えていたのよ」
この年頃の女の子のおおよそがそうであるのと同じ様に彼女もなのであった。彼氏がいなくてもその作り方やこれからのことは考えていたのである。
「まあ見ていなさいって。やってやるから」
「ふうん、それじゃあ見せてもらうわね」
「あんたのその」
「秘策ってやつをね」
こんな話をしていたのであった。かくして鈴は康史を自分の彼氏にすべく動きはじめた。まずは何気なく彼のクラスに行ってそのうえで言うのであった。
「あの、誰かいない?」
「あれ、七組の工藤じゃねえか」
「どうしたのよ」
すぐに彼のクラスの面々から声をかけられた。
「いきなりここに来てよ」
「何か用なの?」
「用があるから来たのよ」
ここでちらりと康史がいるかどうか見回す。見れば彼は自分の席に座って雑誌を読んでいる。野球の雑誌で阪神タイガースの月刊誌であった。
「ふうん、虎ね」
鈴はそれもチェックして密かに笑った。
「私も阪神ファンだしこれもいいわね」
しかしそれはとりあえず置いてである。鈴はさらに続けた。
「困ったことになったのよ」
言いながらさりげなく康史のところに向かう。そうして彼の前でさらに言うのだった。
「次の授業古典なのに古典の教科書忘れちゃったのよ」
「で、ここまで来たのかよ」
「誰か貸してくれってっことね」
「駄目かな」
康史の前で話す。話しながら彼を見るとであった。
目と目があった。実はその瞬間に彼女は目を笑わせたがそれは一瞬で消した。そしてそのうえでさらにその言葉を続けるのであった。
「誰か貸して欲しいけれど」
「ああ、それだったら」
康史は親切な人柄である。従って、であった。
「僕丁度持ってるし」
「あっ、いいの」
「よかったらね」
こう鈴に言ってきて実際に教科書を出してきたのである。
「どうぞ」
「有り難う、恩に着るわ」
「うん、じゃあね」
「それじゃあ」
こうして鈴はその教科書を受け取って一礼してから彼のクラスを後にした。そうして自分のクラスに戻って席に座るとである。何と
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