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アバタもエクボ
第六章

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第六章

「あんな可愛い娘いないよね」
「いや、同意求められても」
「ちょっと」
「何て言ったらいいか」
 流石に皆今は返答に窮していた。彼のあまりもののろけぶりに呆然となってしまっているのだ。それも無理のないことであった。
「まあ可愛いし」
「いい娘だけれど」
「それでも」
「あんな娘今だにいるなんて嘘みたいだよ」
 これ以上はないまでに緩みきった顔でまた言うのだった。
「本当にね。可愛いし奇麗だよね」
「しかし。そんなに平均点高いかな」
「七十点位だよね」
「そうよね」
 彼等から見ればそれ位なのだった。
「ちょっとそこまでは」
「いってないし」
「ねえ」
「だよな」
 同じクラスの仲間、友人としての評価だ。少なくとも丈よりは客観的で冷静な評価なのは間違いなかった。それだけ今の彼は凄いことになっているのだ。
「ううん、こりゃマジだ」
「マジ馬鹿だ」
「ここまで馬鹿だったなんて」
 皆あらためて丈に呆れ果てた。
「好きだってのはわかったけれど」
「そこまではね」
「どうしたものかしら」
 しかし悪い気がしないのも事実だった。皆そこまで一途な丈に好感を持ったのも事実だった。そうして彼に黒ビールとソーセージを与えてそれに専念させたうえであれこれと話すのだった。
「どうしようかな」
「どうしようって?」
「だから。こいつ」
 言うまでもなく丈のことである。
「告白させる?どうする?」
「いや、できないでしょそれは」
「無理かな」
「告白できたらしてるわよ」
「そうよね」
 女の子達はこう言うのだった。
「毎日毎日何回もクラスに来て見てるだけだし」
「そういうの見たらやっぱり」
「告白はできないわね」
「絶対にね」
「何だよ、それ」
 男組はそれを聞いて思わず顔を顰めさせた。そのうえでのろけた顔のままで酒と御馳走を楽しんでいる丈を見たうえで言うのだった。
「臆病なんだな、こいつ」
「あそこまであからさまなのに」
「何なんだよ」
「だから結局あれなんでしょ。気が小さいのよ」
「それで純情なんでしょうね」
 女の子達は彼をこう見ていた。
「だからね。言えないのよ」
「もう学校の皆も理佐本人も知ってることなのに」
 しかもだというのだ。
「ちょっとね」
「それはね」
「しかし」
 ここでまた話す彼等だった。
「向こうはどう思ってるんだ?」
「理佐のこと?」
「そうだよ。向こうは」
「どう思ってるんだ?」
 今度は彼女の気持ちについて話すのだった。相手がどうかというのも問題だった。

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