Interview11 1000年待った語り部 V
「ノルマとして捉えたほうが」
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レイアがルドガーと共にリドウとビズリーに交渉した結果、翌日から1週間、分史対策エージェントへのインタビューが許可された。
もちろんいくつかの制約は課されたが、レイアには取材を許されたというだけで充分な成果だった。
その取材も今日で最終日だ。
レイアは応接室で、大きく溜息をついた。
ノートにはびっしりと文字、文字、文字。走り書きばかりで、レイア自身が「この時の自分は何を書きたかったんだ」と苦笑してしまった。
そんなお粗末なメモだが、これらは1週間をかけて綴った、エージェント――クルスニク一族の、骸殻能力者の、人生の記録なのだ。
『分史世界で知り合いと会うと罪悪感がひどい』
『分史世界の自分が自分より幸せそうで嫉妬した。因子を破壊する前に自分を襲った。今でも思い出して吐く』
『分史に渡ったエージェントが必ず帰れるわけではない。だからいつも指名されたくないと内心思っている』
『分史に住み着こうとした同僚も過去いた。止められなかった。戦ってその世界ごと同僚を殺した』
『時計をお互いに見せ合って違いに感心する』
『ピンチの時に危険を顧みず時計を貸してくれた仲間に感動した』
『彼氏が浮気した分史を見てしまって、気まずくなって彼氏と別れた』
『分史の娘が病弱。ガリガリに痩せた娘を見て、家に帰って健康な娘を見て泣いた』
『因子化した体を見せたくなくて恋人との関係が進められず破局』
『体に因子化の痕が広がると、この先を想像して泣きたくなる』
『因子化が進んで辞めた同僚を知っている。自分が無事でいられるかが不安』
『正直逃げたい』
『早く辞めたい』
『世界とかよく分からない』
『こんなゲーム設定した精霊マジ許せない』
『オリジンとかクロノスとか会えたら一発殴りたい』
『てかこのゲーム自体メチャクチャに壊してやりたい。願い事『過去に戻せ』とかで』
記事になるまでは誰にも見せられないし、決して手放せない。レイアは知らず強くノートを握っていた。
「大丈夫か」
ルドガーだった。没頭しすぎて、彼が入ってきたことにも気づかなかった。
「え、あ! うん。内容の濃い話いっぱいで圧倒されちゃっただけ」
「……なあ、今日はここまでにしないか? 取材するレイアがそれじゃ、万全のインタビューはしにくいんじゃないか?」
ルドガーは本気でレイアを心配してくれている。
気に懸けてもらえるのは嬉しい。心がぽかぽかする。でも甘えは程々に。
今のレイアはルドガーの友人ではなく、一社会人なのだ。
「大丈夫だよ! 体は全然疲れてないし。向こうがせっかく時間空けてくれてるんだもん。お願いしたわたしからギブアップなんてできな
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