Interview11 1000年待った語り部 V
「ノルマとして捉えたほうが」
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社に入社されたんですか?」
「いいえ。しばらくは訳も分からず時計にも触りませんでした。それから普通に学校を卒業してクラン社に入社して、最初は秘書室に配属されました。分史対策室に配属されたのは入社から半月後です」
「その時はやっぱり不安に思いました?」
「はい。何か左遷されるような失敗をしたかしら、と一晩悩みました。実際に行ってみるといかにも歴戦の勇者という方ばかりで。しかも説明は社長直々にだと言われて、前室長に社長室まで連れて行かれましたのよ? 社長の前に立って説明を聞く間、ずっと心臓が破裂しないかヒヤヒヤしていました」
「確かにそれは緊張してもしかたないですね。ビズリー社長は迫力のある方ですから」
「でしょう? その上、分史対策室が世界の命運を担うセクションで、わたくしにも骸殻があって。しばらくはユリウス前室長に言われるままに、分史を壊して回りました。一種のアイデンティティクライシスでした」
「そう、ですね。お辛かったんじゃないですか?」
「最初はそうですね」
「最初ということは、今は違ったお考えを持ってらっしゃる?」
「考えというか……どうでもよくなったんです。文句を言っても、哲学をしても、精霊を恨んでも、仕事は変わりませんもの。わたくしが辞表を出さない限り続きます。だからもう、どうでもいいことにしてしまおうって」
「どうでも、って……世界を、壊す仕事ですよ?」
「そうですね。でも働かないとお給料は貰えませんし、そうなると生活は立ちゆきませんよね? それは困ります。就職自体が厳しいご時世、辞める踏ん切りもつきませんし。かといって骸殻能力者である以上、異動は不可能ですし」
ジゼルは首を傾げた。エレンピオス人には珍しくない青紫の両目は、どんよりと濁っていた。
レイアの背筋に冷たいものが走る。――これは病んだ人間の目だ。
「だったら何も考えないでノルマとして捉えたほうが気持ちはずーっと楽ですわ。どうせ逃げられないなら、最大限、知りたくないです」
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