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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴? バレンタイン特別編
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行世界への干渉の痕跡によって何が起きるのかが分からない以上、それは絶対事項だった。

「………こんな思いするくらいだったら、志願しなきゃよかったかも」

足を抱えるように体育座りをしたいりこは、誰に言うでもなくぽつりと呟いた。
自分を責めているのか、それとも手に入れた物を手放したくないのか、自分でもわからない。でも、今の生活が本当は神秘術と計画によって齎された歪な物なのだと考えると――その度に、自分が嫌いになっていく気がした。

でも何よりも辛いのは、本当は罪悪感などではない。

「さざめくんともいつかはお別れ……ううん、エレミア様次第では人員の追加や交代だってあり得る」

計画はまだ10年近く続く。その別れが10年後であれ明日であれ――ずっと一緒に居続けることは出来ない。その事実が、いつもいりこの心に暗い影を落とす。
今日はもう寝よう、といりこは自分に言い聞かせた。
寝れば少なくとも今は余計な事を考えないでいいから。



 = =



翌日の朝、バレンタインデー当日。

「結局寝れなかった………」

目の下のクマをファンデーションで隠したいりこは、なるべくその不調を見せないようにしっかりした足どりで部屋を出た。皮肉にも寝ることを諦めた結果、身体のだるさが勝って余計な事を考える余裕がなくなったりしている。

我ながらナイーブになりすぎだと自分に呆れつつ、いつものように朝食に向かう。
リビングには既にかりそめの父と母が待っていた。

「遅いわよ、入子(いりこ)。ご飯もうよそいじゃったから早く食べなさい」
「ごめんなさーい……」
「なんだ、今日はお前元気がないな?」
「んー、ちょっと夜更かし」

地球にやってきて約1年。このやり取りにももうすっかり違和感を覚えなくなってきてしまった。
いずれ別れる時は、ちゃんとした恩返しをしよう。かりそめとはいえ娘として接してくれた二人だ。第二の親と呼べる二人に恩返しをするくらいの事は許されてもいいはずだ。
そう一先ず心に決めた所で――

「今日はさざめくんの方が早起きしたみたいねぇ。さっきからさざめくんウチの玄関で待ってるわよ?」
「え……ええ!?嘘ぉ!?」
「ホントよ。入子が部屋から出てくる少し前から……ホラ、窓の外」

言われるがままに見てみると、確かにいる。この家は丁度窓から玄関が見える構図になっているので、いりこは確かにさざめが玄関前で待っているのを確認した。

異常事態発生だ。
いや、一睡も出来なかったせいでぼうっとしていたことと化粧に時間をかけてしまったことは不覚だったと思うけれど、さざめが自分より早く起きたことなど今まで一度もなかった。今日とて頑張ればさざめが家から出てくる前にこちらは食事を終えられるくらいの時間帯なの
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