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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴? バレンタイン特別編
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らその文化の根本的な部分の全てが地球由来だったりする。そのため、バレンタインというイベントの持つ意味が彼女の星では長い年月をかけてゆっくりと変わっていったのだ。

「こっちじゃチョコ渡す日になってるけど、私の世界のバレンタインは街を挙げてのお祭りだったよ?」

その内容は、あらゆる人種や国家を超えた人類の絆と愛を確かめ合うための祭り。ほぼ全世界共通の一大行事で、確かに愛する人に告白する定番の日でもあった。でもチョコを渡すなんて風習はなかったし、そもそも男子から女子からという決まりも存在しなかった。渡すのはアクセサリが主流で、そこから本気度が上がると指輪。お菓子や手料理などは無いわけではないが主流ではない。
故にいりこの感覚からすると、この日本のバレンタインは違和感が拭えない。

「でもなぁ……記憶改竄の時に私もチョコ渡したってことにしちゃったしなぁ……郷に入っては郷に従え、だよね」

一応ながら事前情報でバレンタインデーに関する情報は集め、チョコも用意している。さざめとて男の子、チョコを貰って嬉しくないと言う事はないだろう。ただ、流石にハートマークのチョコは気恥ずかしかったので今回は自分の母星にちなみのあるメダル型にしてあるのだが。
いりこの母星では、メダルがキリスト教で言う十字架と似た役割を果たしている。食事の前はエレメダルという特別なメダルをつまんで家族と一緒にお祈りをしたものだ。

「………向こう側のお父さんとお母さん、元気でやってるかな」

時々忘れてしまいそうになる。
今の家族が記憶を弄っただけの紛い物だという事を。
田楽いりこという存在は、本来ならばこの地球上にはいない。
便宜上両親という立ち位置にいる二人の男女は、そもそもまだ子を授かっていないのだ。欲しいけれど、家計を考えると産むのは難しい。そんな2人の心の隙間に入り込むように、いりこは記憶を改ざんしてこの家庭に入り込んだ。今、この家の財産はいりこによる改竄で子供を育てるに十分な額まで増やされている。それもこれも全てはマザーコンピュータ・エレミアの指示通りに。

だが、こちらの事を本当の娘だと思って接してくれている2人を見ると、時折どうしようもなく胸が痛む。2人を裏切り、人の心を弄んでいる気がしてくる。そして、この任務が終わったら私は――世話をしてくれたこの二人の記憶を再び改竄して、自分と関わった記憶を抹消し、あちら側の地球に帰ることになるだろう。

優しい二人を偽物の家族として利用して、こちらで出来た友達には別れひとつ告げずに記憶から自分の存在を抹消。寂しいとか薄情とか、そう言う問題ではない。地球へ至る作戦に参加したとは、つまりいずれそうなることを理解しているという意味に他ならないのだ。
いりこという存在がこの地球にいた痕跡は全て消すことになる。並
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