俺馴? バレンタイン特別編
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うぞ………!」
くそう、いりこめ。まさかこのような精神攻撃を仕掛けてくるとは卑劣な奴。俺はまだあいつを信用したわけでも納得したわけでもない。それを忘れないように――ん?
「待てよ。実はあの差出人不明のチョコこそ実はいりこの物で、妄想癖の激しいいりこはそれによって俺と幼馴染関係が完成したと思い込んだ上で、周囲があいつが病んでいる事を承知で口裏を合わせているとしたら………」
ぶつぶつと失礼千万な想像をして身を震わせる。あれが突然狂気に満ちた目で包丁など振り回そうものなら、流石の俺も恐ろしくて近寄れない。あいつの心が病んでいる可能性も考慮して、いりこを無力化出来て、かつ身に着けていても周囲に訝しがられないアイテムを入手しなければいけない。
そうだ。いりこはまだ味方だと決まったわけではない。あいつの謎が解けた時には、俺とあいつは敵同士になっているかもしれないのだ。今のうちに弱点を把握し、対策を立てなければならない。いざとなれば一発――
「お見舞いしてやらなきゃな。何か買うか……」
「おや、そこの兄ちゃん!誰かのお見舞いに行くのかい?」
「………え?」
背中にかかった声に、俺は思わず間抜けな返事を返した。
振り向くと、そこになんと花屋の店の真ん前。呼び止めているのはその店の店員だった。
「だから、見舞いの品を買うんだろ?……おや、君は確か延年さんの家の?」
「え、あ……はい」
「そうかそうか!いやぁ、前に何度かお母さんと一緒にここに来たろう!覚えてないかい?」
店員さんは気さくな笑顔でさぁさぁと店に手招きしてきた。すこし困ったことになった。
流石にこの流れで「いえ、不審者撃退グッズの話です」などと言い出せるはずもなく、俺は曖昧に笑みを浮かべながら付いてゆく。
……まずい、この店は確か母さんがひいきにしてる店だった筈。店員の言うとおり、何度か母さんの荷物持ちがてら寄ったことがある。あまり態度が変だと母さんに説教を喰らいかねない。ここは適当に何かを買って誤魔化すのが得策だろう。
俺がそんなことを考えているとは露知らずの店員さんは、見舞い向けの造花の花束がある場所へ誘導する。その善意が今は少々痛いのだが。
「しかし、今日に買うってことはプレゼントは明日かい?相手は女の子?」
「ま、まぁそうですね……」
対いりこ装備を手に入れようとしていたので間違ってはいないが、咄嗟に言ってしまった。これはこれで母さんに弄られることになるような気がする。しかし、と俺は自分の言葉を振り返って思う。
(そうだよなぁ。普通お見舞いっていったら病院とかに行くとき使う言葉だよなぁ)
「いやぁ洒落たことをするじゃないか。『フラワーバレンタイン』って奴だな。きっと相手の女の子も喜ぶよ」
「フラワー……バレンタイン?」
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