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Sword Art Online 月に閃く魔剣士の刃
8 あの日の目覚め・今日の目覚め
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り男の顔があった。
 しかしあの胸糞悪い笑いなどではなかった。

「...夢......?こ。怖かったよぉ...。」

 顔の近くの胸元に思わずすがりつくと一つ二つ、嗚咽が漏れる。一度堰を切ったらもう止めようがない。

 涙が目尻から溢れ出て、嗚咽は噛み殺せないくらい漏れてきて、すがりついてしまった両手はシャツをますます強く握ってしまう。迷惑だとは思う、でももうそんな事では止まらないくらい感情は振り切れてしまっていた。
 いっそのことこのまま涙と一緒にこの体まで掻き消えてしまえばいいのに。叫ぶ代わりに泣き散らした。

 でも、フルフルと震える頭を、何かが撫でてくれている。昨日と同じ、心地よい手がゆっくりと髪を梳いてくいく。
 そう、まるで荒れた心も忌まわしい記憶も漏れてしまった嗚咽も全て洗い流してくれるように。
 そのまま彼は、何も言わずに泣かせてくれた。

「ご迷惑をかけてしまいましたね...すいません。」

 落ち着くまで泣いていたら、すっかり疲れてしまった。
 取り合えず今更感溢れるが謝罪を入れておくと、

「いや、別に迷惑ではないけどさ。もう平気か?」

 なんとか頷くと、またそっと頭に手が乗って。

「随分うなされてたぞ、暗所恐怖症もそれが原因らしいし。もう少しこうしてたほうがいいか?」

 同情ではない、でも気遣いの感じられる声はささくれた心に心地よかった。

「もうちょっとだけ、このままじゃダメですか?」

「気の済むまでそうしてな。別に何か急いでるわけでもないから。」

 昨日あった青年はそう言うと背もたれにしている岩に身を預けた。ゆったりと過ぎる時間に、ついうとうとしまう。

 それに落ち着かせようとしてくれているのかポンポンと背中を叩いてくれるのが気持ちよくて、今度は安心して眼を閉じた。

「あ、また寝ちゃったか。」

 やけに静かになった、そう思っていたらまた寝息が聞こえてきていた。
 でも今度はちゃんと眠れているような寝息で、それに少し安心出来た。

「さてっと、俺は俺でカリキュラム端折ってペース早めないとな。」

 膝と胸ははしばらく貸し出すことにして、思案を巡らせつつ後ろの背もたれ代わりの岩に大きくもたれかかった。
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