第八話
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裏にひっそりと存在する、近所の人も知らないような小さな喫茶店の新作プリンの発売日すら知っている彼が。甘味情報なら葵に聞け、と教師の間ですら噂になっている彼が、甘味を諦めようとしているのである。それはつまり、相当に大事な用事しかありえない。
年齢に対して精神年齢が高すぎる少女は、そう予測したのである。
どんどん思考がエスカレートしていくすずかに向かって、葵は断腸の思いで頭を下げた。
「スマンすずか!俺の分のケーキは取っといてくれ!速攻で終わらせて、すぐに向かうから!」
そんな思い違いをしていたからこそ、彼女は葵の言葉を遮った。
「駄目だよ葵君。すぐに終わらせるなんて、相手の人にも失礼でしょ?こういう時は、自分の楽しみだけじゃなくて、相手の事も考えてあげなきゃ。それが礼儀というものです。」
「た、楽しみ・・・?」
ビシッと。普段はあまり何かを強く言わないすずかにそう指摘されて、葵はクエスチョンマークを頭に浮かばせながら首をかしげた。・・・何か、盛大な思い違いをされている気がしたのである。
だが、それを指摘される前に、すずかは言葉を重ねる。
「ケーキは明日、学校に持ってきてあげるから。さ、行ってらっしゃい!」
そう言って、彼女は葵となのはの背中を、ポンと押す。決して強い力では無かったものの、あまりの急展開に呆気に取られていた二人は、さしたる抵抗も出来ず、ただ押された。
「ん?ん?一体どういうことよすずか?なんで二人は来ないの?」
この流れに付いて行けなかったアリサを、迎えに来ていたリムジンに押し込む。
「さあさあアリサちゃん。二人の邪魔をするのは悪いよ。いつでも遊べるんだし、今日は私と二人であそぼ。」
グイグイと。普段の大人しい印象とは裏腹に、半ば強引にアリサを押し込めた彼女は、車の窓から手を振った。
「じゃあ、また明日。楽しんできてねー。」
二人の返事も聞かずに走り去った車を、二人は呆然と見つめるしか無かった。
(うあああああああああ!原作知識なんてゴミクズ同然だあああああ!)
目の前で破壊の限りを尽くしている化物を見ながら、彼は心の中で泣いた。頼りにしていた知識が、殆ど役に立っていないからである。
「た、大変だよ葵君!ど、どうにかしないと!」
二人の目の前には、鋭利な刃物で切り裂かれたように崩れ落ちた木々が散らばっていた。場所は、なのはがユーノを発見した、物語の始まりの場所である。彼らは今、この惨状を引き起こした化物より少し離れた場所の木の陰に隠れて様子を伺っていた。
『ギ?ギイイイイイイイイイ!』
手当たり次第に伐採を続けるのは、五メートル程の大きさの化物である。体は、白いフサフサとした毛で覆
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