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SAO編−白百合の刃−
SAO20-ドウセツ
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…生きていけない!」

 ドウセツの心の奥に閉まった、弱い自分の本音。それが軋むような悲鳴として外に出していた。
 ドウセツにとっての何よりも恐怖なのが、先行く陰の中で生きる自分が映し出されていて、先行く陽の中で生きる自分が映し出された二つの未来を比べてしまったんだろう。しかも、ドウセツにとってはどちらとも情けない自分しか残らないと思ってしまった。だから、まだ心地良いと思っている陰の中で暮らしたいと、諦め半分に願っている。でもその半分、ドウセツはその未来に怯えていた。
 サチも怯えていた。そんなサチを救いたかった。だけど、あの時の私は強がりだけしかなくて、自分は強いって勘違いしていたから、肝心なところで守れずに、置いて逃げてしまい、救うことができなかった。
 私にはその覚悟の重さを軽く見てしまった。誰かを救うってことは、想像以上に重い。抱えきれなかったら崩れてしまう。その結果が後悔と恐怖、そして逃れきれない罪悪感。それに加えるとしたら救う人の人生を狂わせ、またその周りの人の人生も狂わす。人を救うってことは簡単なことじゃない。
 正解なんてあるのかわからない。あったとしても、その答えを自身満々に言えない。ただ、私は間違っていた。誰も助けを必要とせず、自分だけの力でなんとかしようとしていたことが間違いだった。重い物を一人で抱えきれないなら、誰かに手伝って、重いものを持ってくれれば未来は変わっていたのかもしれない。
 でも、それで正解とは限らない。間違っているのかもわからなない。だからといって、このままドウセツを放ったらかしにすることなんてできはしなかった。
 重くて抱えきれなかったら崩壊へと繋がる。おそらく、たどり着いた先は良いことなんてないだろう。私もドウセツも、脆くて崩壊したら治るのは難しい。最悪二度と治ることもない。
 失敗の確率を計算できるほど器用ではないし、頭も良くない。その逆もそうだ。成功するって断言はない。絶対もありはしない。
 …………。
 私はいろいろと考えた。それも慎重し過ぎる程、あらゆることを考えた。

 そして考え抜いた私は、答えを出した。

 私なりの答えが出た。

「ドウセツ」

 覚悟は決めた。後は……ドウセツの思いを持つだけだ。

「それでいいかもしれないよ」

 その言葉を聞いたドウセツは戸惑いの声を口にする。

「ど……ど、どう、いう……」
「だって……この世の中、何もかも完ぺきにできるわけじゃないから。不完全なままが丁度良いと思うんだ」

 私はドウセツの傍によって抱きしめる。彼女は拒むことはなかった。それは恐怖でもあるが、求めているものでもあるから……受け入れてくれた。
 もう、覚悟はできた。抱える準備もできた。
 怖くはない、怖くない。
 大丈夫。大丈夫……。
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