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SAO編−白百合の刃−
SAO20-ドウセツ
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 ドウセツの言っていることは嘘じゃないだろうけど、去年の十二月のクリスマスの日、あの日まで助けての一言を言う資格がなかった私を救ってくれたのはドウセツ。助けての一言を拾ってくれたのはドウセツなんだ。だから、そんな自分を傷つけるようなことは言わないでほしかった。

「そんなことないよ。ドウセツのおかげで、私は自分の罪と向き合うようになったんだよ……ほんとだよ」
「…………」

 沈黙するドウセツ。言葉を口にすることなく、ドウセツは酷く震えていて、力いっぱいに自分を抱きしめて怯えていた。そんな姿を表したくない最後の抵抗として、ドウセツは膝に顔を埋めこちら側から顔を見せないようにしていた。

「……ごめん、キリカ」
「謝らなくていいよ」
「無理よ。貴女が優しく言っているのに私は何も言えなかったのよ。弱くて暗くて泣き虫で臆病で肝心なところで冷酷になれない中途半端な小さな人なのよ。もう、アインクラッドに閉じこめられてから二年も経つのに、怖くなったらここに逃げてしまうくらい臆病者。そして誰にも見られないように泣いて、ポジティブに考えることなんてできない。それを見せないように強がろうとしてもどこかで決断しきれないことだってある。わた、私は……どうしようもない……本当に駄目で、弱い存在なの、よ…………」

 震えながらもどうにか口に出すのが精一杯で、ドウセツは我慢しきれずに泣きだした。

 ドウセツ。

 『漆黒』の異名を持つ彼女はベータテスターの経験もあり、最強ギルド、血聖騎士団の一員だった。イリ―ナさんに戦術を習った経験もあり、また無駄のない冷静な分析力に加えて、居合いという他のプレイヤーとは一味違うスキルを使う彼女は、トッププレイヤーの中でも上位に入る実力者。
 ただ彼女は、慣れ合いは好まず、必要外な時以外は人と接する者はほとんどいない。冷静な性格もあってか、ドウセツをあまり好まない人もいる。ストロングスがその一人かもしれない。
 
 私達が知っているドウセツは、クールで無愛想で毒を吐く、一匹狼な漆黒のソロプレイヤー。

 私が見ているドウセツは、誰よりも純粋に、誰よりも恐怖に怯え、誰よりも不器用な、どこにでもいそうな、泣き虫でまだ幼い少女だった。

「ごめんなさい……本当は、助けて欲しいけどっ」
「だったら!」
「救われたら、ずっと弱虫になっちゃう……ずっと臆病者になってしまう……からっ……そっとして。陽に背けて、陰に生きてきた私にとっては、恐怖だから…………」

 手に力を入れ、引き絞るように心の想いを喉から口へと通って、ドウセツは叫ぶ。それはもう、悲鳴だった。

「救われたらっ……私、もう……立て、ない……! ずっと、ずっと、情けない自分しか残れなくて、そうなったら、もう……立ち上がれ、ないっ! もう…
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