第5話 颯馬「働きたくないでござる」
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
軍が精強なのは謙信様の力があってこそだ。
まず、上杉軍は何より近接戦闘を好む。実際、弓兵など全体の約3割ほどしかいない。
何故、こうも近接大好きな脳筋が多いのかと言うと、兵質が高いからだ。
上杉軍の兵質は、かの武田軍とも競えるだろう。実質、兵質での戦いなら上杉、武田、島津の3つが争う事になる。それぞれ、兵質は異なるところがあるが、間違いなくこの3つが候補だ。
まず、兵質が高いと言う事は接近戦を好む。
上杉軍は大半が槍を使う兵だ。強い所ほど短い槍を使う。理由は簡単だ。長い槍だと機動力が落ちるからだ。
さて、この「接近戦上等かかってこいや」の軍には弱点がある。先程も述べたとおり、ここまで軍が精強なのは謙信様の力があってこそだ。それに近接戦闘の好むということは、軍が如何に強くても少なからず遠距離からの攻撃は弱点になる。
鉄砲などの新たな武器も日の本に入ってきている。
ならばこちらも鉄砲など使えばいいだろうということになるが、越後は地形的に貿易には向いていないので入手は難しい。
一方、西の方は新しい武器の新調などもできる上に、近い将来に強敵となるだろう上杉軍を叩きに来る可能性がある。その際に謙信様が越後にいらっしゃれば、奴らにも対抗できる。
いや、返り討ちにできるだろう。
しかし留守だった場合、ただでさえ謙信様頼りの軍。謙信様が居なければ弱体化し、そこに弱点である遠距離での攻撃で一方的に攻められたらもうどうにもならん。
慎重に事を進めるべきなのだ。
俺が勝手に考察していると定満殿が口を開いた。
「謙信様の意見はもっともなの……でも、今はその時期とは言えないかも? 武田との絡みもあるの」
「武田……信玄の所か」
甲府に本拠を置く武田信玄は謙信様にとって最も意識する相手だ。
先ほど述べたとおり、兵質では奴らとの張り合いになる。既に、数度にわたってにらみ合いを繰り返している。
「あまり、周りを疎かにすると……関東が疲弊するだけなの」
「俺も慎重に事に当たるのを推奨します。知っての通り、越後は地形的に冬季での進軍は難しいです。下手に動けば、何より苦しむのは民でしょう。兼続の言う通り、北条には火種があります。すぐに勢力を拡大するとは思えません」
俺の言葉に謙信様と定満殿は感心するように頷く。
あ、俺もう働かなくていいのに口だしちまった。
「兵站を調え、平穏をもたらすことができると見た時、関東へ進出する。皆それまで動くことを禁ずる。それと……定満、颯馬の働きについてどう思う?」
「戦場には慣れてないけど、大局を見る能力、情報収集については……1人前になってきたの」
「ふむ、颯馬」
「ウィッス」
「お前を副軍師に任命しようと思う。これは定満より、上申の申しでがあってのことなの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ