R.O.M -数字喰い虫- 1/4
[7/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ベッドの上。
先ほどまで見ていたそれが全て夢であることを語るように、そこには芋虫などいない。
全身が脂汗でべたつき、下着がパジャマごとびしょびしょに濡れている。荒い息と震える体を必死に抑え込むように肩を抱き、夢は醒めたと何度も何度も繰り返しつぶやき、体を覆う緊張が段々と抜けていく。
「あれは……何?何の夢……だったっけ?」
いや、思い出さない方がいい。美咲はそう思い、頭を振った。
忘れていいものならずっと忘れていよう。それにしても今は何時だろう。早い時間ならばシャワーでも浴びて寝汗を落としたい。
ふと横のデジタル時計を見て――息が止まる
デジタル表示の液晶に這うそれが――夢から現実まで追ってきたように、芋虫がいた。
「ひぃッ!?イヤアァアァァアアアアアッ!!」
寝起きでもたつく身体を必死に動かし、まるで自分が芋虫になったように身をよじってベッドから転げ落ちた。動け、逃げろと言い聞かせるように上手く動かない足を突っ張って離れようとして、不意に冷静になる。
本当にそれは芋虫だったのか。春歌の時のように、思い込みでいると思ってしまったのではないか。
祈るような気持ちで体を起こし、時計を見る。
ほんの一瞬だけ虫のように蠢いた気がしたが、そこに芋虫は張り付いていなかった。
「……き、気のせい……だよね?寝ぼけてただけだよね……」
目を擦って改めて見れば、そこには朝の6時過ぎを示す数字が並んでいるだけだ。
美咲は、漠然とした不安を抱えながら、シャワーを浴びに部屋を出た。
部屋の机の上には、春歌のノートの最後のページに記された算用数字の塊が、彼女を見張るように開かれた状態で放置されていた。
= =
今日は、ずっと気分が悪い。
数字を見る度、あの芋虫を思い出して気が沈んでいく。段々と数字が全て芋虫に見えてきて、触ると実体化するような、潰れたら極彩色の体液をばらまくような、強迫観念のような思いが体を縛っている。
「ねーねー美咲ぃ!点数どうだった?アタシ社会の結果が最悪でさぁ!……美咲?どったのよ、なんか今日は機嫌悪いじゃん。女の子の日?」
「なんか朝から口数少ないし、本当どしたの?春歌がいなくてさびしいとか?」
「……うん。そんな、とこかな」
友達の優しさは有り難いけれど、とてもじゃないが楽しくお話をする気分ではなかった。
申し訳ないとは思いつつも、当たり障りのないことだけ言って美咲は話を適当に切った。
気分は一向に良くなる兆しを見せず、何度も頭の中で不快な感覚がリフレインされる。
頭の裏側に虫が住みついたような不快感が、少しずつ精神力を蝕んでいく。
返却されたテスト答案は赤点を免れたにもかかわらず、答案に書か
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ