R.O.M -数字喰い虫- 1/4
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ていった。
ノートの最後のページにあった、あの謎の図形の事など忘れて。
その図形が宿すものが何なのかを理解せずに。
= =
この世界の全てを数字で表すことが出来るとしたら、世界は数字で出来ている。
もしも本当に物質を数字で構成している世界があるのならば、目の前に広がるこの光景こそがそれなのだろうか、と漠然と思う。現実味のない、どこか朧なその世界を。
見覚えがあるようで、しかし決定的に何かが違う、ホログラムで形成されたような風景の中に、私はいた。
町の壁をよく見ると、コンクリートに見えるすべては夥しいまでの数で構成されていた。大量の数字を信じられない力で圧縮して、切り出して、無理やり人工物のように押し止めているかのようだ。
それは、人類の驕った科学信仰の矛盾を風刺しているようにも見えた。
数字、数字、数字。数字で全てを推し量る世界。
私は数学など嫌いだ。わざわざややこしい方法で、導き出す必要もない謎を作り出しては解読させることに一体何の意味があるというんだろうか。真理などというあるかも分からぬ答えを追求するのは学者だけで良い。少なくとも私には必要ない。
道行く人を構成するのは、数字。
ノートを構成するのは、数字。
数字を構成するのは――
ああ、うんざりだ。
過去の賢人がアラビア数字などという便利なものを作らなければ、人はまだ無知でいられたのに。
数字なんて無くなってしまえばいいのに。或いは、ノートの最後にあったような意味を成さぬ図形として存在すればよかったのに。私は八つ当たり気味に足元にあった数字の空き缶を踏み潰した。
ぐちゅり、と生々しい水音。脚から伝わる感触は空き缶を踏み潰したそれではない。
不審に思って足の下を覗き見て――
――そこに、私の足で踏み潰されて極彩色の体液を撒き散らしながらも蠢く巨大な芋虫を見た。
「え………ひぃっ!?」
全身を逆撫でするような悪寒が襲い、生理的嫌悪感から来る悲鳴が喉から漏れた。身の毛がよだち、身体から脂汗が噴出する。
今までにただの一度も見たことがない、子供の腕程の太さはあろうかという巨大な芋虫。柔らかいものを踏み潰したような手応えが、確かにこれを自分が潰したという実感を与えてくる。
どろりと粘性が高くツンとした酸臭を腹や顔から零し続ける芋虫は、まだ生きていると主張するように足の裏でうぞうぞと動き回り、醜く悍ましい姿を見せつける。
目を逸らし、逃げ出したい。体が震える。吐き気を催すソレから一刻も早く離れたい。
靴越しに感じる言い知れない忌避感と、脚が汚されていくような恐怖。
「ああ、ああぁ……!い……いやっ………見たくない!こんな気持ち悪いもの見たくないのに…
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