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思惑の色は――紅
第1話 狼藉
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ーチャーの手が、凛の頭に触れた。撫でられるのかと思ったがそうではなく、ツーサイドアップに束ねてある左右のリボンを結びなおし、黒髪を梳き、髪型を整えなおしてくれたようであった。
「ふむ……これだけ魔力があれば、明日ぐらいは大丈夫そうだな。今夜は、ゆっくりと眠ることだ。私が番をしておこう」
 それだけ言うと、アーチャーは青白く霊体化して、すぐに消えた。
 凛は、立ち上がることすらできない。それで、しばらく蹲っていると、身体の状態に変化が生じてきた。
「え……嘘……なん、で……」
 気持ちが落ち着いてくるにつれ、嬉しさがこみ上げてきたのだ。そして、自分の腰が動きたがっているのを感じた。身体が悶えている。何かを欲して――いや、分かっている。凛は、自分があの、最後の痛みを欲しているのに気づいた。
 あの痛みを、いや、もっと強い痛みを。
 欲しいっ!――という、強い気持ちに突き動かされ、凛は危うく、自分の股間に手を伸ばしかけた。直前まで、痛すぎて軽く触ることすら躊躇われていた、淫核に。しかし、思い留まる。
 ここは、廊下だ。犬猫ではあるまいし、こんなところで自慰に耽るなんて……しかも、制服姿で。
 ありえない、魔術師であるはずの自分が、サーヴァントの性技で欲情するなど、あってはならない。
 それは、誰かに言われるまでもなく、分かっていることであった。
「…………う、うあ……んああああーーーーーっ……ん!」
 背を反り返らせ、高く、大きく、凛は喘いだ。切なさに堪えきれず、泣きながら。それが、少女が生まれてはじめてあげた、嬌声であった。
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