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思惑の色は――紅
第1話 狼藉
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、それでいて礼儀正しく、優しく、快感を贈ってくる……凛はその舌に、彼女自身の舌を絡めていった。


「……ん……っ……ん……ふ……、……ぷっ……あ、ん……ぷはぁ……ああん……はあ……はあ……」
 ふと気づくと、凛の口はアーチャーの口と離れていた。口の中に溜まっている、どちらのものともつかぬ唾液を嚥下し、彼女は深い呼吸をはじめた。
「はあ……はあ……ああ、ふ……はあ……ん、あ……は……ぁ…………」
 快楽に浸かりきっていた頭が冷えてきた。どのくらいの時間、互いの舌を吸い合っていたのだろうか。凛には、まるで覚えがなかった。頭が、ずきずきと痛むせいだ。この痛みが治まれば、分かる。
「もしや、キスは初めてか?」
 アーチャーの声を聞くだけで、嬉しさが心を弾ませる。
「……ぁ……は……」
 凛は答えなかった。快感であろうと、今は毒だ。頭の痛みが消えなくなる。それに、喋るだけでも、ずきりとする。アーチャーの肩に後頭部を預け、凛は恍惚の表情を浮かべた。
「そうか……だが、仕方あるまい。サーヴァントにとって、主の魔力は何よりも肝要だ。それが尽きることなど、絶対にあっては、な――」
 彼女の返事を待たず、アーチャーは勝手に合点した。そして、また唇を近づけてくる。胸を揉みしだいていたはずの手が、凛の顎を抑えていた。
 顔が、動かせない――逃げられない。少女の細い咽喉が、ごくりと鳴る。
「あ、あん! 待って、今、ん、お願い、ちょっと……ん…ま……っ」
 遅すぎる、拒絶。再び、キスがはじまった。鎮まりかけていた心臓がまたけたたましく胸を叩きだしたが、不思議と頭痛は治まってゆく。
 そして、思い出してきた。つい今しがたまで、舌と舌で戯れあっていた記憶――熱い、気持ちとともに。
「ん……んんんーーーっ!」
 だが、悦楽による微睡みの沼に戻ろうとしていた脳髄が、突然の痛みに驚き、悲鳴をあげた。 優しく紳士的だったアーチャーの舌が、口が、凛の舌をあまりにも強く吸ってきたのである。それこそ、抜け落ちるほどに。そして、柔らかく擦る程度になっていたはずの股間への責めも、苛烈に変わる。充血して硬くなった淫核が、平たくなるまでに押し潰される。
「ん! んん! ん、んーーっ、んーーーー!」
 痛かった。本気で、痛い。泣き叫びたかったが、舌を絡め取られているため、声は出ない。ただ、無音の声帯が勢いよく振動しているのだけは感じ取れた。
「ん……かはっ! あ……ん……けほっ、けほっ、けほっ!」
 涙が口に入り、唾液に塩辛い味が混じりはじめた頃、凛はようやく解放された。その場にしゃがみ込み、咽喉を押さえて咳き込み続ける。咽喉が、そして大きく開いたままの股間が痛かった。黒タイツが、歪に伸びてしまっている。もう、明日からこれは履けない。新しいのを用意しなくては。
 ア
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