黎明の光が掃う空に
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く。
不意に、斜め後ろからも雄叫びが上がった。
聴いていて胸が空くような叫びだった。男のモノで、彼の声。しかし後……ぞっとするような、笑い声が響き渡る。
「クク、あはっ、あははははははははっ!」
からから、からからと笑う声は渇きが含まれ……。
全身を這い回る悪寒は、明であっても抑えられず……敵に至っては、腰が引けたモノや、注意を逸らされたモノほぼ全てであった。
明には彼に構っている暇は無い。
敵を引き付けてくれるなら上々で、怯えさせてくれたのもありがたい。
頭は冷静にと、どんな時でも訓練してきたから、彼女は彼を見やる事もせずに、自分の怪我を最低限に抑えて敵の壁を崩していく。
「……っ」
腕を掠った矢傷に、僅かな違和感が一つ。急ぎで肉を削ぎ落した。
――毒があるのか。これはちょっとやばい。
トン、トン、トン……と木々を交互に蹴って上って、枝に乗った明は夜目を凝らした。唐突な行動に敵兵は付いてこれず見失う。
円陣を組んでいる場所が一つ、兵列の壁は重厚な横並び。夕を助けた後に抜けるなら……敵を減らしておくべきだ。
判断を下し、明は口元を引き裂いた。残虐な笑みを浮かべてケタケタと嗤いを漏らす。楽しいのか、嬉しいのか……こういう時に笑ってしまうのは、彼女の癖でもあった。
絶好の狩り場で、引きつけてくれる囮が居るのだ。自分はただ、一つでも多く敵の命を喰らってやればいい。
「ひひっ」
舌を出すと同時に、ぶん、と分銅を投げつければ……鈍い音が一つと脳漿が飛び散った。
鎖を牽けば、幾人かが絡みとられた。飛び降りて斜め一閃……弾ける血しぶきを浴びて、ゾクゾクと快感が背筋に来る。
矢の気配はもう慣れた。白馬義従の射撃の方が強くて速くて精度が高かったのにと……鎖を揺らすだけで弾き飛ばし。
トン、と地を蹴って最速の鎌撃。同時に……切り損ねた敵がつんのめり、真横を通り過ぎた。飛んできたのは敵で、飛ばしたのは彼だった。
見る事もせずに合わせてみようかと、明は踊るようにステップを刻み、あっちの方が広いからと跳ねながら駆けた。
一歩、鎌で脚を斬り。
二歩、斬り上げで顔を割り。
三歩、鎖を舞わせて行動を縛る。
力量差は圧倒的で、俊足の自分に弓は追いつかない。矢が来ても鎖だけでなく……
「……おっと」
ガッ、と肉片を蹴り上げてでも、死んだ人の身体を盾にしてでも防げばいいだけ。
縦横無尽に動く暗殺者の戦場で、明は頸を刈り、命を喰らい、ただ救う為に戦って行く。
悲鳴は数え切れない程に張り上がり、情けない泣き声と逃げ出す足音も多数。化け物だ、と誰かが叫んだ。彼に対してか、自分に対してか……どちらもでいいと、彼女は思う。
赤い髪が返り血で紅に染まり、木
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