第3話 天狗の狗法
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」
景虎様は自身の隊に指示をする。
「正面の敵に突撃をかけるッ!」
号令にしたがい、敵陣への突撃が始まる。
「ふっ!」
気合と共に景虎様が刀を振ると、後を追うように赤い液体が宙を舞った。
敵兵が倒れた時、景虎様はすでに次の敵を求めて戦場を駆けていた。
敵と向かい合っては刃を振るい、次々と敵を地に伏せる。
俺ではあんな風にはできない。切り結ぶのが精々だろう。
それか、不意を突いて一撃で仕留めるぐらいしかできない。「隠形」などは狗法の中では得意なので相手の後ろをとって、首を落とすといった事ができる。
この戦は先方を務めた弥太郎と、これに良く連携し、別働隊の対処も見事にこなした与六の活躍で危なげなく勝利を収めた。
しかし――
弥太郎殿の影に隠れるようにしながら戻ってきた与六を見て、俺たちは驚いた。
与六は頬に傷を負った……矢傷のようだが……。与六は立派な女子だ。
いくら与六の性格であっても顔の傷は気になってしまうだろう。
「すまない。もう少し敵を押さえていればよかったのに」
「この傷は私が未熟なためについたもの……小島様のせいではありません」
「痛むか……?」
「自分の未熟さで知った痛みです。それを受け止められない程子供ではございません。皆様、あまり気にされては私の方こそ気に病んでしまいます。このような傷1つなど、将にとって宝のようなものです」
「はあ、やだやだ。強がってさ……」
「颯馬?」
自分の指に切り傷を入れ、血を流す。そして、血に塗れた指を与六の口に入れ込んで頬に手を当てる。
「んぶ……!?」
すぐに口を離して与六は怒る。
「何をする!? なんでお前の血など!!」
「黙ってろ。じゃねえと治せるもんも治んねえよ」
「さてと……感謝しろ。俺の命を分けてやるんだ。犬死にして無駄にすんなよ?」
念を込める、傷口を手で覆い、覆った箇所が暖かくなる。直後に、与六の傷と同じ位置に痛みを感じる。
狗法「霊波」――傷を癒やす唯一の狗法。しかし、俺は未熟すぎる故、自分の血を分け与えないと「霊波」が発動しない。それどころか自分の命を削る。「なんで人の役に立ちそうな術は上手くできないのだ」と自分を呪ったこともあった。
「霊波」は治療している箇所に同じ痛みが伝わるという要らんおまけもついてくる。
山で怪我をしたものを助ける際にも使っていたんだが、俺の寿命大丈夫かな? 中途半端とはいえ、天狗になっているので生命力だけなら自信があるが。
「あっ……」
与六が温もりを感じると同時に、傷は塞がっていった。残っているのは出血により、体外に出た血だけだった。
「よし塞がった」
「ふぇ……?」
「与六!!」
「きゃっ!!!」
横から弥太郎殿が与六に抱き着き、与六がかわいらしい声を上げた。
「颯馬、今のはな
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