第3話 天狗の狗法
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」
「承知した」
立ち上がって、一同の前に出て自らの策を開陳した。
「……颯馬、これはどういう事か、説明が必要だと思うが?」
景虎様は皆にその書を開いて見せる――そこには何も書かれていなかった。
白紙の書を見て、軍議の間が喧噪に包まれる。
「しゃーないか。んじゃ、説明させてもらおう」
「早速の質問ですが、景虎様は越後統一を果たせばそれで終わりですか?」
「景虎様は毘沙門天の化身ともいうべき大きな器の持ち主。越後一国のみを治めて良しとするには勿体無いです。未来など、誰にもわからない。それは神であったとしても」
「先を見越して考えなければと思った時、俺にはそこまでの策は講じれなかった。まずは目の前のことからと思うが、いずれはその先を。このことを皆に前で言及したく、白紙の書を持ってきました」
「そうか……颯馬の考えは分かった」
景虎様は頷いた。その表情に、一瞬辛そうなものがよぎっているようにも見えた。
あらら。ちょいとまずい事でも言っちまったか?
「では、当面は与六の策を是とし、一刻も早い越後の統一をめざすこととする」
景虎様は立ち上がり皆を見渡し……。
「この越後は国を二分する争いの中にある。しかし、この戦いは同郷の者同士の戦い。それを望む者などいるはずもない」
「皆、心して取りかかって欲しい。この地の太平を一刻も早く取り戻そう」
景虎様の言葉に皆が「応!」と応じ、この日の軍議は終了した。
戦場には幾多の感情が渦巻く……怒り、悲しみ、悔恨、慙愧、狂気、狂乱……中には……悦楽などほとんどは良いものではない。悦楽なんて感じてるうつけはどこの誰だ? 質が悪いぞ?
俺は合戦中、隊から離れて単独行動をとる事がある。天狗の狗法「透視」や「隠形」などを使って、敵情や戦の流れを見る。
しかし、人目に付くとまずいのでできるだけ「飛翔」などは使わずにしている。
考えてみよう。いきなり空を飛んでいる人間を見たらどう思う?
「にしても、相変わらず弥太郎殿は大したもんだよな……」
この戦で先方を務める弥太郎殿の隊が敵を圧倒していく。与六の隊と連携し、敵を包みにかかっていた。
あの二人って相性がいいのだろうか? ああ、俺も欲しいな。相棒ってやつが。
そんな事を考えている間に、颯馬の目に怪しい動きをする集団が映る。
「おやおや、別働隊か?」
「隠形」を使って地を駆け、本陣に知らせに戻る。山育ちで足や身軽さなら誰にも負けない!! と思いたい。
「別働隊か……定満」
「先方の戦いは……順調なの……よろちゃんの隊に対処をお願いすれば、問題ないの……」
「そんじゃ、俺が伝令に走りますか?」
「いや、しばらくここに残って欲しい。別働隊があったという事は動きがあるはず……後程偵察を頼みたい」
「心得た
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