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閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
72.エクスキャリバー
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れるさ」

 俺もキリトに声をかけようとしたその時だった。

「シュウ、ちょっと私の体を支えてくれないかしら」

「え……?」

 俺の声など気にもせずにキリトの前に進みでたのは、水色の髪のケットシーだった。
 左手で肩から長大なロングボウを下ろし、右手で銀色の細い矢をつがえる。

「──二百メートルか」

 呟き、詠唱をはじめる。
 反射的に重要なことだと思い俺はシノンの腰のあたりに手を置いて支える。一瞬、彼女の体がビッくとなるが弓を引き絞る。
 そして、矢を放った。矢は銀のラインを引きながら飛翔していく。弓使い専用の種族共通スペル、《リトリーブ・アロー》だ。矢に強い伸縮性・粘着性を持つ糸を付着して発射する。通常なら使い捨ての矢を回収したりする便利な魔法だが、糸が弓の軌道を歪めてしまい普通は近距離でしか当たらない。
 さすがのシノンでも無理だろと思いながらも体を支えているとある一つのことを思い出した。
 以前、《ロンギヌスの槍》を取りに行った時にゴーゴンの瞳で体が硬直した俺を助けたのはこの魔法だったと。あの時の距離は二百メートルという大層な距離ではなかったが八十メートル弱はあったのではなかっただろうか。リズが作った弓の限界距離は百メートルくらいだったと記憶している。
 もしかしたら……もしかしたらだが、彼女ならいけるのではないだろうか。
 たぁん!、と軽やかな音が聞こえた。金属同士が遠くでぶつかったようだ。

「シュウ、引っ張るの手伝って」

 言われるがままに俺は立ち上がり、シノンが握っている魔法の糸をシノンの体の後ろから思いっきり引っ張った。かなり重い。向こうの方に見える黄金の光が、ぐうっと減速し、停止し、次いで上昇を開始した。
 そしてわずか二秒後には、エクスキャリバーが俺とシノンの手の中に収まった。
 ズシンという重みが両手に加わる。

「うわ、重……」

 そんなことを呟きながらケットシーはくるりと振り向く。俺も彼女と全く同じ動きをする。

「「「し……し……し……」」」

 七人とユイの声が、完全に同期する。

「「「シノンさん、マジかっけぇ─────!」」」

 全員の賞賛に、耳をピコピコ動かして応える。

「それであんたはいつまで抱きついてるつもりなのよ」

「わ、悪ぃ!」

 あまりの衝撃に俺はキャリバーを引き上げた状態のままをずーっとしていたらしい。
 シノンはキリトを見ると、軽く両肩を上下させた。

「あげるわよ、そんな顔しなくても」

「あ……ありがとう」

 礼を言いながら、キリトは《エクスキャリバー》を受け取った。
 これでクエストも一件落着というものだ。

「……ねえ、シュウくん」

 その声に俺は嫌な汗が背中を伝うの
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