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ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜
閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
72.エクスキャリバー
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ぅ! そりゃあんまり薄情ってもんじゃないの!」

 リズベットが拳を振り上げて叫んだが、樹を相手に通じるわけもない。

「よ、よおォし……こうなりゃ、クライン様のオリンピック級の垂直ハイジャンプを見せるっきゃねェな!」

 立ち上がった刀使いが、直径わずか六メートルほどの円盤上で精一杯の助走をする。

「あ、バカ、やめ……」

 キリトの制止も聞かずにクラインは華麗な背面跳びを見せた。しかし普通に考えて届くわけもない。彼の体はそのままフロアへと落下してくる。
 その瞬間、周囲の壁に亀裂が入り、スリュムへイム城の一角が本体から分離した。

「く……クラインさんの、ばかーっ!」

 シリカがいつにない本気の罵倒をする。八人と一人と一匹を乗せた円盤は自由落下を始める。
 これほどの高さから落下するのは正直な話でとても怖いことです。
 俺たちの全力の悲鳴が響いていく。
 俺は円盤の縁から、おそるおそる真下に覗き込んだ。
 千メートルまで近づいているヨツンヘイムの大地には、《グレネードボイド》が口を開けている。

「……あの下ってどうなってるの」

 シノンが隣で呟く。

「も、もし、もしかしたら、ウルズさんが言ってた、に、に、ニブルヘイムに通じてるかもな!」

「寒くないといいなぁ……」

「い、い、いやあ、激寒いとおお思うよ! なんたって、しし霜巨人の故郷なんだから!」

 どうやら腹をくくったような表情をしているキリト。
 そういえば、と俺は思い出したように隣にいるリーファに声を掛けた。

「スロータークエのほうはどうなったんだ?」

 すると、リーファは悲鳴を止めて、もしかしたら歓声だったかもしれないが──胸元のメダリオンを見た。

「あ……ま、間に合ったよシュウくん! まだ光が一個だけ残ってるよ! よ、よかったぁ……!」

 安堵の笑みを浮かべて、両手を広げて飛びついてくるリーファの頭を撫でながら、少しの可能性を考えた。
 何かがあるはずだ。生き残るための方法が……
 すると俺の首を抱いていたリーファが、ぴくりと顔を起こした。

「…………何か聞こえた」

「え……?」

 耳を済ますが、聞こえるのは空気の音だけだ。シルフ族の聴覚で遠くの音まで聞こえているのだろうか。

「ほら、また!」

 再び叫んだリーファが、俺から離れて円盤の上で立ち上がった。

「あぶねぇぞ……リーファ……」

 叫びかけた俺の耳にも、その時。
 くおおぉぉ──……ん、という遠い啼き声が聞こえる。
 すると遠くの暗闇に小さな光が見える。闇妖精(インプ)の暗視の補正がその姿を鮮明に映し出した。それは魚のような流線型の体と、四対八枚の翼、そして長い鼻を持つ
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