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閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
72.エクスキャリバー
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……あのね、お兄ちゃん。あたしもおぼろげにしか憶えてないんだけど……たしか、本物の北欧神話では、スリュムへイム城の主はスリュムじゃないの」

「え……ええ!? だって、名前が……」

「そうなんだけどね。でも、神話では、確か……す……す……」

 リーファが必死で思い出そうとしていると、キリトの頭上のユイが答える。

「《スィアチ》です。神話では、ウルズさんの言っていた黄金の林檎を欲しているのも、実際にはスリュムではなくスィアチのようです。ここからはALO内のインフォーメーションですが、プレイヤーに問題のスローター・クエストを依頼しているのは、ヨツンヘイム地上フィールド最大の城に配置された《大公スィアチ》というNPCなのです」

「……カーディナルもなんつうクエストを生成してやがんだ」

 このままいけばスリュムへイムがアルンまで浮上して、上の玉座の間にいるであろうスィアチ殿がラスボスとして降臨するのであろう。そんなことさせるわけにはいかないし、第一ここまで来て諦めるわけにはいかない。
 どこまでも続く螺旋階段を、突き進んでいく。

「────パパ、五秒後に出口です!」

「OK!」

 キリトが叫び、視界の先にわずかに映った光めがけて、俺たちは飛び込んだ。
 そこは、氷を正八面体、ピラミッドを上下重ねたような形でくり抜いた空間だった。
 壁はかなり薄く、ソードスキル一発で砕けてしまそうだ。螺旋階段は部屋の中央を貫き、一番底まで続いている。
 そして、その先に───黄金の光が見えた。
 それは間違いなくあの時に俺とリーファ、キリトとユイがヨツンヘイムから脱出した時に見えた輝きと同じものだ。
 八人一列になって駆け下りた階段はようやく終わりを告げて、俺たちはそれを半円状に囲む。
 フロアの中央に、氷の中に何かが閉じ込められているようだ。それは木の根っこ。無数の毛細管のように集まって太くなり、一本の根元につながっている。
 しかしそれはあるところで断ち切られている。切断しているのは、微細なルーンの文字が刻み込まれた薄く鋭利な刃。黄金の輝きをまとった長剣が垂直に伸びている。
 それは、俺が持っている《ロンギヌスの槍》と並び立つ伝説級武器《聖剣エクスキャリバー》だ。
 キリトはその柄を握った。

「っ…………!!」

 力を入れて台座から引き抜こうとしているが、びくとも動いていない。左手も追加し、両足で踏ん張って、もう一度引き抜く。

「ぬ……お…………っ!!」

 それでも結果は変わることはない。
 代わりに俺が抜いてやりたいという気持ちもあったがキリトが無理なら不可能だった。
 俺はどちらかといえば筋力タイプというよりは、敏捷力を重視している方だと思っている。ALOというゲームでは筋
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