閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
72.エクスキャリバー
[2/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
人の王は無数の氷片となり爆散した。
「…………やれやれ、礼を言うぞ、妖精の剣士たちよ。これで余も、宝を奪われた恥辱をそそぐことができた。──どれ、褒美をやらねばな」
左手を持ち上げ、右手に握る巨大かつ華麗なハンマーの柄に触れる。そこにはまっていた一つの宝石が落ち、小さな人間サイズのハンマーへと変形する。
黄金のハンマーを、トールはクラインに投げ落とした。
「《雷槌ミョルニル》、正しき戦いのために使うがよい。では──さらばだ」
トールが右手をかざした瞬間、青白い稲妻が広間を貫いた。俺たちは反射的に眼をつぶり、再び開けた時にはそこにはなにも存在しなかった。そして九つ目のHPMPゲージもなくなっていた。
「…………ふう……」
キリトが小さく息を吐くと、とりあえずクラインの隣に歩み寄る。
「伝説の武器ゲット、おめでとう」
「…………オレ、ハンマー系のスキルびたいち上げてねェし」
ハンマーを抱いて喚くクラインを見て周囲から和やかな笑いが起こるなか、俺は一人で考え込んでいる。
「なんであんただけは、そんな険しそうな顔をしてるわけ?」
シノンが疑問を持ったのか声をかけてきた。
「いや、スリュムを倒してこのクエが終わりならそれはそれで全然いいんだよ。だとしたら肝心のエクスキャリバーはどこにあるんだ?」
俺の話を全員が真剣に聞いている。
しかしただの仮説でしかないが、これが本当ならかなりまずいことになる。
「それにウルズに言われたのは聖剣を引き抜けだ。だったらまだクエストは───」
その瞬間だった。
体の芯を揺さぶるほどの振動が響いた。
「きゃああっ!」
シリカが悲鳴をあげる。その隣でシノンが尻尾をS字に曲げながら叫ぶ。
「う……動いてる!? いえ、浮いてる……!」
巨城スリュムへイムが、少しづつ上昇している。ということは最悪の展開だ。
首から下げたメダリオンをのぞき込んだリーファが、甲高い声を迸らせた。
「お……お兄ちゃん! クエスト、まだ続いている!!」
「な……なにィ!?」
喚くクライン。気持ちは全員一緒だ。
「さ、最後の光が点滅してるよ!」
リーファの悲鳴にも似た声に、ユイが鋭く反応した。
「パパ、玉座の後ろに下りの階段が生成されています!」
俺たちは返事する時間も惜しんで、猛然と床を蹴り、玉座までダッシュした。
裏に回り込むと、確かにユイの言うとおり、氷の床に下向きの小さな階段がぽっかりと口を開いている。本来なら慎重に行かなければいけないのだろうが俺たちは躊躇わずに突っ込んだ。
三段飛ばしで螺旋階段を下っていくと前方を走っていたリーファが声をあげる
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ