第二章
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、振り回されっぱなしなんだな」
「ああ」
渋々ながらそれを認める。口は尖り、頬は膨らんでいる。
「それで今日もな」
「公園でデートだってな」
「知ってたのかよ」
部活もクラスも同じ奴の言葉に顔を向けた。
「知ってるも何もあんだけ大声で話してたらさ。誰だってわかるぜ」
「ちぇっ」
「まっ、こっちは妬けるけどね。お暑いこって」
「おかげで彼女がいない奴にとっては目の毒だぜ」
「彼女がいてもな。そこまでくっつかれてると」
「けどなあ、あいつはそれじゃないとなあ」
憮然とした顔は元に戻ったが今度はのろけが入っていた。だが義弘本人はそれには気付いてはいなかった。
「嫌だって言うんだよ」
腕を組んでこう言う。
「へえ、それはまた」
仲間達はそれを聞いて茶化し気味に応えた。
「だから今日だってな」
「表向きは嫌々、と」
「男のツンデレってのもな」
「おい、何でそうなるんだよ」
今度はツンデレという言葉に反応してきた。無意識のうちにかなりムキになっている。
「別に俺はな」
「いいからいいから」
「早く終わらさないとまずいんじゃないの?デートの時間が減るぜ」
「そうそう、彼女持ちは急がないとな」
「さもないと後が怖いぜ」
「フン」
それに言い返せなくてまた憮然とした顔になる。だがやはりそれには言い返せない。そんなやり取りをしているうちに後片付けは終わった。そして義弘は校門に向かった。夕暮れが深くなり、影が長くなる校門に彼女は一人立っていた。少し俯いて鞄を前に持って。その影はやはり長かった。赤くなっていくグラウンドに黒い影が不思議なコントラストを形作っていた。赤は橙が入った鮮やかでありながら、何処か朧な赤であり、黒ははっきりとした色であったがその輪郭は赤の中に消えてしまいそうになっていた。そんな赤と黒であった。
「あっ」
俯いていたがそこに影が一つ近寄って来るのに気付いた。義弘の影である。
「義弘君」
「待った、よな」
彼女の様子を見てそれはわかった。申し訳なさそうに声をかける。
「まあちょっとだけね」
晃子はくすりと笑ってそれに応えた。
「けど。いいよ」
「悪いな、それでも」
「だからいいんだって。じゃあまずはコンビニ行こうよ」
「お菓子だよな」
「うん」
お菓子という言葉に反応してかにこりと笑った。あどけない、無邪気な顔だった。
「お菓子一杯食べながらね。お星様見よう」
「今日はそれだけか?」
「何?またしたいの?」
「っておい」
その言葉が何を意味するのかはわかっている。それを聞いて慌てて辺りを見回す。幸いにして今は校門の辺りには誰もいなかった。
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