第1話 天狗、山を下りる。
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足音がすぐ傍まで近づいているのを感じるが、町の方はむしろ穏やかなようだ。
「景虎様」
「薬売りか、どうした?」
「実はよからぬ噂が耳に入っていて……」
「そうか……城ではじきに、傷薬など入用になるかもしれぬ」
「そのようですね。早ければ一両日中にはそうなるかもしれません。ご注文くだされば、用意しましょう」
「……そんなに早くか……?」
「いえ、噂ですが……」
「そうか、薬を用意した方がいいな。明日までに頼めるか」
「お任せください」
相変わらずの奴だ。しかし、思っていたよりも向こうは早く動きそうだ。
城に戻って協議を――?
景虎の視線の先の茶屋に見慣れない男が入っていった。
「見ない顔だな……」
「へぇ…はじめて此処に来たけど中々いい町じゃないか。やや閑散としているが、のどかな町だな」
山道を抜け出て、天に向けて大きく伸びをする。
この時代にあって用いるのどかな、という言葉は褒め言葉といえるだろう。
街道にも戦の爪跡はあまり見られず、歩き易くて感心する。
まあ、襲われても仕込み杖で自衛できるので治安が多少悪くても問題ない。
城下町の入り口に手頃な茶屋を見つけ、俺は荷を解いて腰を下ろす。
「ふぅ…………休憩がてらに団子でも食べようか」
「失礼、此処の者ではないな? どこから来た?」
突然声を掛けられ、振り向くと男か女か分からない外見の女性が立っていた。(髪の長さ的に多分女性)
女性は青い着物に身を包み、大小二本の刀を腰に差し、全体的にきりりとと引き締まった容姿は名のある武将ではないのかと思われる。
町の警備で余所者の俺を不審に思って声を掛けたのだろう。
「え?あ、いや……俺の名は天城颯馬。出身は……あそこです」
「山……か? あそこで何をしているのだ?」
「話せば長くなりますよ。それは聞かないほうがいいです」
「構わん、聞かせてくれ」
幼いころから山で修行してて、つい先日山を出て、此処に来たと言うとこまで話した。
そして、探している人がいるということを。
「探し人か?」
「はい。この町のどこかにいるのは分かっているんですが……」
「あ、そう言えば、貴方の名前……」
「きゃぁぁぁぁーーっ!?」
その時、茶屋の裏手から若い女子の声が聞こえてきた。
駆け付けると、町娘が男に因縁をつけられていた。
あーやだやだ。どんな教育されたらあんな誰にでも突っかかるような面倒くさい性格になるのだろうか?
あの男の親の顔を見てみたいもだ。
「先ほどの粗相の礼、たっぷりしてもらわねばならんな?大方、心中では儂を落ちぶれた浪人風情と小馬鹿にしていたのであろう?」
「そ、そんなこと考えてもおりません!私
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