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片方ずつ
第八章
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第八章

「あいつがな。俺の片目なんだよ」
「片目?」
「かみさんがかい」
「そうさ。そういうことさ」
 そうだというのだった。
「そしてな。俺もなんだよ」
「あんたもって」
「話が見えないんだけれどな」
「俺もあいつの片目なんだよ」
 そうだというのだ。しかしその言葉は彼等にとってはよくわからないことだった。話を聞いても首を傾げるばかりであった。
「かみさんがあんたの?」
「そしてあんたもかみさんの」
「そうさ。そういうことなんだよ」
 こう言うのだった。
「わかったな。それでな」
「いや、全然わからないな」
「だよな」
「何なんだ?」
 やはり話がわからない。いぶかしみそのうえで首を傾げさせていく。
「それは」
「お互いの片目っていうのは」
「俺達は一人なんだよ」
 今度はこんなことを言うリチャードだった。
「あいつと俺で。一人なんだよ」
「二人で一人か」
「じゃあ目も」
「そうさ。俺が片目であいつも片目なんだよ」
 そうだというのである。二人でだというのである。
「わかったな。だからいいんだよ」
「そうか。そういうことなんだな」
「二人でか」
 これでやっとわかった彼等だった。つまりリチャードとエリーはそこまで深い絆で結ばれている。そういうことなのだとわかったのである。
「それじゃああんたそれでいいんだな」
「今の状態で」
「いいさ。俺の目は二つだ」
 言いながらまたにやりと笑うのだった。
「俺達は一緒だからな」
「一緒か」
「あんた達は」
「じゃあな。ちょっと行くところがあるからな」
 笑顔で話しかけてきた彼等に別れの言葉をかける。
「あいつのところにな」
「かみさんのところにかい」
「今からか」
「そうさ、それじゃあな」
 明るく右手を振っての言葉だった。
「またな」
「ああ、それじゃあな」
「またな」
 こうしてエリーのところに向かう。彼女は片目を隠す為なのかサングラスをしていた。しかしそれ以外はそれまでと全く変わっていなかった。
 その彼女が球場の外でリチャードを待っていた。笑顔で彼を迎える。
「じゃあ行きましょう」
「ああ、それでどうだったんだ?」
「三ヶ月よ」
 自分の腹をさすりながらの言葉だった。
「もうすぐよ」
「三ヶ月か」
 リチャードはそれを聞いてしみじみとした声になった。
「俺も何だな。今度は親父になるんだな」
「ふふふ、そうね」
「また一人できるんだな、俺達が」
 自分達がというのだった。
「またな」
「そうね。私達がもう一人ね」
「なあ」
 リチャードはあらためて妻に声をかけてきた。
「これからだけれどな」
「これから?」
「これからもずっと一緒だぜ」
 こう言うのだった。
「ずっと
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