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十兵衛の眼
第二章

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「真相はな」
「そしてそれがしも」
「気付いたな」
「はい、やはりその眼は」
「ははは、みなまで言うな」
 弟にそこから先は言わせなかった。
「よいな」
「そうですな、こうしたことは」
「言わぬ方が面白い」
「左様でありますな」
「まあわしはこのままでおる」
 眼帯をしていくというのだ。
「そういうことでな」
「ではこれからもですな」
「武芸に励む」
 その剣にというのだ。
「何処までもな」
「ではその剣も」
「うむ、しかしな」
「しかし、ですな」
「わしはまだまだじゃ」
 ここでこうも言うのだった。
「剣はな」
「既に父上を超えられたと」
「父上が言っておられたのじゃな」
「それがしもそう思いますが」
「いや、父上は心眼を持たれておられる」
 またこのことを言う十兵衛だった。
「わしはそれがないからな」
「だからですか」
「わしはまだ父上には及ばぬ」
 こう弟に言うのだった。
「それに和尚殿にもな」
「だからですな」
「このまま進む、わしはな」
 眼帯をしたままでと言うのだった。
「心の眼を持つ為に」
「兄上も心眼を持たれますか」
「どういったものかはわからぬ」
 持っていない、だからだ。
「しかしじゃ」
「持つ様になられるのですね」
「そうする」
 こう弟にもいい鍛錬を続けるのだった、そして数多くの相手と勝負もしてきた。その強さは日増しにそうなっていっているものだった。
 その十兵衛にだ、ある日沢庵が声をかけた。丁渡家の庭で一人木刀を振っていた彼のところに来たうえで。
「いつもながら精が出るのよ」
「おお、これは和尚」
 十兵衛は沢庵に顔を向けて応えた。
「よく来られた」
「気付いていなかったのか」
「いや、家の玄関に来た時にな」
 その時にというのだ。
「来られたことはわかった」
「気配でじゃな」
「それがわかる様になった」
「それは何より、これまでは声をかけるまでだったな」
「うむ、わからなかった」
 こう沢庵に答える、その通りだと。
「中々な」
「備わってきたか」
「どうだろうな、わしのそれは」
「はっきりとはわからぬか」
「和尚や父上の様にはまだな」
 至っていないというのだ。
「わし自身はそう思っておる」
「左様か、しかしな」
「それでもと言うのか」
「わしが玄関に来た時にわかったのなら」
 その時はというのだ。
「近いわ」
「心眼を備える時は」
「その時に御主はわしを超えるな」
 沢庵は微笑んで十兵衛に告げた。
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