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吸血蝶
第六章

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「安心してくれよ」
「まあそれはどうでもいいがな」  
 賞金についてはと言うヘミングウェイだった。
「金は」
「それよりもか」
「これだよ」
 そのカクテルを飲みつつ言うヘミングウェイだった。
「これが欲しかったんだよ」
「だから満足してるのか、あんた達は」
「その通りさ」
「俺もな」
 ヘミングウェイだけでなくレスターーも笑って言う。
「この通りな」
「そうか、それじゃあな」
 警官も彼等に応えてだ、そのうえでこう言った。
「どんどん飲んでくれよ」
「好きなだけか」
「飲んでいいんだな」
「俺は約束は守る主義なんだよ」
 だからだというのだ。
「遠慮なくな」
「飲んでいいんだな」
「そうして」
「ああ、どんどん飲んでくれよ」
「それは有り難いな」
 ヘミングウェイは警官の言葉ににやりと笑って返した、そのうえでこう言うのだった。
「俺はカクテルには五月蝿いんだよ」
「だからか」
「この店のカクテルは美味い」
 それで、というのだ。
「だから楽しませてもらうぜ」
「それじゃあな」
「それとな」 
 レスターもここで警官に言う。
「あんたの名前は何ていうんだ?」
「俺か」
「ああ、今思い出したけれどまだ聞いていなかったよな」
「そういえばそうだな」
「それじゃあな」
 警官も彼に応えて言う。
「言うな」
「ああ、何ていうんだい?」
「ロナウド=セニーニュっていうんだ」
「セニーニョさんか」
「警部補だよ、階級は」
 警察のそれはというのだ。
「今度警部になれたらいいな」
「そうか、じゃあセニーニョ警部補」
「ああ」
 階級も呼ばれてだ、笑顔で応えるセニーニョだった。
「あらためてだな」
「乾杯しようか」
「事件が終わったことにだな」
「そのことにな」
 レスターはセニーニョに笑顔で言った、それにセニーニョそれにヘミングウェイも応えてそのうえでだった。
 ヘニングウェイがだ、カクテルを持って言った。
「じゃあ事件の解決と警部補の昇進に」
「出来ればだけれどな」
 セニーニョが笑顔で応える。
「その二つにだな」
「乾杯だ」
「それじゃあな」
 レスターも笑顔で応える、そうしてだった。
 三人であらためて乾杯して飲む、そのカクテルは三人にとって格別のものだった。


吸血蝶   完


                               2014・6・28
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