第三章
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第三章
当然エリーもそれを知っている。それで彼に言ってきたのである。
「だから肘には気をつけて」
「肘か」
「試合が終わったらアイドリングして」
それだというのだった。
「他にはマッサージも受けておいて。時々整体もしておいて」
「整体もか」
「怪我とかしない為によ」
その為だというのだった。
「いいわね。怪我をしたら終わりだから」
「それでか」
「それに先発だし」
それについても言うエリーだった。
「肩にも気をつけてね」
「ああ、それもか」
「そうよ。本当に怪我をしたら終わりだからね」
そしてまたこう言うのだった。
「いいわね、本当にね」
「わかった、じゃあそれもな」
「そういうことよ。それとストレッチはしっかりして」
このことまで気を配っていた。
「身体は柔らかくね」
「わかったさ。もっとしていくか」
そんなことを話していくのだった。こうして彼は怪我もしなくなった。そのまま順調に勝ち星を挙げていき遂に二百勝に手が届くようにまでなった。
その二百勝がかかった試合の日だった。あらかじめ登板が告げられていたリチャードが家を出る時にエリーが玄関で言ってきたのだった。
「ねえ、今日よね」
「そうさ、今日さ」
自信に満ちた笑みで妻に言葉を返してみせた。
「二百勝のパーティーだからな」
「じゃあ何処かお店に一緒に行く?」
「いや、それよりもな」
すぐにまた答えた。
「家で祝おうか」
「このお家でなのね」
「七面鳥用意しておいてくれ」
アメリカで祝い事に出されるあの鳥である。
「あれをな。頼むな」
「わかったわ。それじゃあ」
夫のその言葉を聞いて微笑んで答えるエリーだった。
「七面鳥のローストと後は」
「ケーキだ」
やはり祝いのものであった。
「そうしてシャンパンだ」
「それで二人で楽しくね」
「祝おうな」
「ええ。買ってそれで用意しておくわね」
「頼んだぜ。じゃあな」
こう告げて家を出る。彼は確実に勝利を収めるつもりであった。そうして試合に登板して。実際に完投してみせたのであった。
勝利のインタビューの場においてであった。彼は高らかにこう言った。
「この勝利はあいつに捧げるからな」
「あいつとは?」
「エリーだよ、俺のワイフだよ」
インタビューをしてきた記者にこう話すのだった。
「あいつ以外にいるか?いないだろ」
「じゃあ今から家に帰ってだね」
「そうさ、二人でパーティーさ」
満面の笑顔での言葉であった。
「二人で二百勝を祝うんだよ」
「そうか。そしてその次は」
「三百勝だな」
今度はそれだというのである。
「その祝いもするぜ」
「よし、じゃあその時を楽しみにしてるからな」
記者は彼のその言葉を受けて
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