第六章
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「あなたはあなたで」
「そういうことだね」
「そう、だからこのままでいてね」
「それがいいのなら」
蒼弥もここまで話して妻の言葉を聞いて頷いた、そうして。
確かな顔になってだ、こう雅に答えた。
「僕でやっていくよ」
「そうしてね」
妻は微笑んで夫に答えた、そうしてだった。
蒼弥は彼のこれまでの動きに戻って修行を続けた、彼の読経そして写経に。これまで彼がしてきた様にしてきた。
するとだ、子供達も姑も言うのだった。
「うん、お父さんに戻ったね」
「そうだよね」
「それでいいのよ」
「お父さんらしくていいよ」
「動きもおかしくないし」
「自然な感じに戻ったわね、蒼弥さん」
そしてだ、元の様にしてみると。
かえってだった、修行もスムーズにいって。
そしてだった、ある日だ。
雅は自分の母の都にだ、台所で晩御飯を作りながら言った。
「うちの人だけれどね」
「最近さらによくなったよね」
「ええ、自然になってね」
そうしてとだ、包丁で青菜を切りながら言うのだった。
「動きがよくなって」
「修行もね」
「変に力が入らなくなって」
そして、というのだ。
「修行も進んでいるわね」
「あの調子ならね」
それこそ、とだ。雅は若い頃の自分によく似ている娘に言った。
「安心してね」
「お寺を任せられるっていうのね」
「お父さんとお話してるのよ」
つまり宗吾と、というのだ。
「蒼弥さんが宗吾さんより住職さんに相応しいとね」
「思った時になのね」
「住職さんになってもらおうってね」
つまりだ、跡を継いでもらおうというのだ。
「そうお話してるのよ」
「そうなのね、それじゃあ」
「あのままいけばね」
都は温かい笑顔で娘に話す。
「それも近いわね」
「そうね、私にはよくわからないけれど」
「お父さんよりもね」
それこそというのだ。
「よくなれるから」
「だからなの」
「そう、もう少ししたらね」
「じゃあその時は」
「お寺頼むわね」
二人に言った言葉だ、今の言葉は。
「いいわね」
「わかったわ、頑張るから」
笑顔で応えた雅だった、母の言葉に。そして数年後。
蒼弥は住職の座を譲られた、その時に宗吾にこう言った、
「何時かはお義父さんと同じだけの」
「いやいや、わし以上になっておるぞ」
笑って言う宗吾だった。
「だから譲ったしのう」
「だといいのですが」
「それがわかるのは自分ではない」
人の成長、それはというのだ。
「他の人じゃよ。蒼弥さんはわしより上じゃ」
「具体的にはどの辺りが」
「それは口では言えぬ、しかしな」
「それでもですか」
「蒼弥さんはわしより上になった、しかし僧侶の道はな」
温和な笑顔だった、この時も。そ
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