第二章 戦火の亡霊船
2話 西へ…(首都高速編)
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に集中した力は硬そうな外殻を突き破り右腕の肘までを飲み込む。そして銀色の玉は沈黙した。
「はぁ…」
最近感じているモンスター相手への物足りなさ、それを乗せたため息をつくと香織へと視線を向ける。その先ではちょうど小さな漆黒のウォーハンマーで金色の球を粉々に砕く光景が広がっていた。
車のクーラーに慣れた体を蝕む暑さによって滲む汗を拭って、彼女は僕に向かって親指を立てたのだった。
僕は、たった今なんの言葉も音も残さなかった球へと視線を戻す。外殻から溶け込むように光となって消えていく球は最後にほのかに黄色を称える結晶を残した。
そんな結晶を拾い、この暑さから逃げるために早々に車へと戻る。そんな僕を追って香織もすぐに戻ってきた。
結晶は倒した者が吸収する。そんな決まりになっている。だから彼女も僕も手ぶらであった。
そして再び車のアクセルを踏み、西への進みを再開する。
さて、そろそろ都心へと入るにあたって重要なことが一つ。それはもちろん生き残りと出会わないことである。
なにせ大量の人が居るはずなのだ。普通に行動できている僕らが見つかってしまえばどうなるかなど予想に難くない。同じような人がいなかった場合、僕らは追い掛け回され、そしてそんな人たちのために動き回らなければならないのだ。
知らない人のために動く気は無いのである。今更面白くもないことをしたくないのだ。
「まず…高速道路に登ってこないんじゃないかな?」
これは香織の一言である。何気ない車内の会話の中、彼女は僕の心配にそう言葉を返したのだ。
「ああ…まあ、確かに。」
そして僕はその意見に納得する。が、その考えは裏切られた。
渋谷インターチェンジの少し先に…大量の車で作られたバリケードがあった。その内側ではたくさんの人が生活しているようである。なにせ車の外側には二人の人間…それも警察官と呼ばれるべき制服を着た人間がいるのだから。
さて、僕らはなぜ高速道路を進んでいるのか、それについて考えるべきだった。僕らはモンスターが少ないがためにここを通ってきたのだ。それなら安全を手に入れるのにも同じ考えに至ってもおかしくはない。ただしそれは生きていけるだけの物資があるのであれば…だが。
しかしここに彼らが居るということはそんな問題を解決しているわけだ。それならば捕まっても問題は無いか…とも言えないわけで、できればこのまま突っ切りたい。しかし間違いなくこの車ではどうしようもないわけで…。
「ちょっとハンドルを頼めるか?」
「任せて!」
ハンドルを香織に任せ、僕は少しばかり集中していく。周りの空気を支配下に置き、そして外へと送り出すのを繰り返すことで大量の空気を操作する。
目の前の警察官にぶつかる直前、僕の
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