第二章 戦火の亡霊船
1話 八月二十九日
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と離れて生活していたのだ。少しでも情が移らないように。食材だけを供給するだけ。
しかしここには赤上さんがいた。
あの戦いを…僕らが学校から抜け出すための戦いに共に挑んだ赤上さんは敵の最後の一撃を受けてしまった。そうして彼女の心は砕かれた。
重度の男性恐怖症…校内で僕らと出会うまでに避難していた職員室での出来事がフラッシュバックしたらしい。なんとか落ち着いた赤上さんから尊き先生が聞き出したことである。
少しとは言え、やはり危険な場所を一緒に行動しただけあって気になってしまう。特に香織の心配の仕方は半端ではない。しかしできることは無かった。
「ただいま。」
と、既に自分の家のようになっている保健室へと戻り呟いた。
今ごろ香織は赤上さんの所に行っているのだろう。僕は旅立つための準備を始める。
肉類は体内保存、そしてその他水類を担いでもう一度外に出た。当然、その量を手持ちで出かける訳にもいかないのであるが、その点はしっかり考えてある。
僕は学校の裏口に向かった。
ピッ…
手元のリモコンを操作して鍵を開ける。そこにあるのは車だ。
何故か街中にほとんど残っていなかった車だが、ポツポツといくつか残っている車があった。その共通点と言えば鍵がささっていること、そして黒い車ということである。その他に車に詳しくない僕には違いが見られなかった。
しかしこの車はガソリンでは動かない。運転しているといつの間にか疲れてくるのだ。僕の体力でも吸い取って動いているかのようである。
僕が結晶を集めて強くなる意味にはこの車も関係していたのである。最初こそは一時間も運転することができなかったのだが、今であれば十時間くらいは間違いなくいけるだろう。それだけ運転してモンスターにやられていれば世話無いので、一日の移動距離はそこまではいかないだろう。
せっせと水を車の後ろへと積んでいく。そんな僕のところに一人の女性がやってきた。
「やっぱりそろそろ行くのね?」
灯時静乃。水を操ることができるこの学校の元先生である。今は世界の変化によって取り残された生存者たちのリーダーをしている。
「もう一ヶ月ですからね。助かった人たちも慣れてきた頃でしょう?」
「くぅー…私も行きたかったわ!」
「別についてきてもいいんですよ?」
「あら…まあ、やめておくわ。」
少しばかり残念そうにそう言った。
それでも彼女はついてこようとはしない。それはさすが先生と言うだけあって責任感が強いと言っていいのだろう。人に関わることは諦めようとはしない。
「でもいつか…追いかけていくわ?」
「ハハ…楽しみにしてますよ。」
やけにリアリティのある言葉である。彼女ならば力も
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