暁 〜小説投稿サイト〜
イリス 〜罪火に朽ちる花と虹〜
Interview10 イリス――共食いの名
「分かってても……付いてけないんだよ!」
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
アは無言でジュードの頭を小さく叩いた。

「…っ…ミラ…」

 呟き、ジュードはレイアの肩に額を押しつけた。
 レイアは拒まず、ジュードの頭を腕の中に引き寄せた。ジュードはレイアのジャケットにシワが寄るほどきつく縋って、嗚咽を上げた。

(ジュードにとっての「ミラ」はそんなに特別な存在なんだ。そんなジュードなのに、レイアはジュードを)

 初仕事を無事終えたルドガーの胸には、達成感は欠片もなかった。代わりに沈殿した泥のような思いが腹の底で渦巻いていた。




 ジュードを慰めるレイアと、そのレイアを食い入るように見つめるルドガー。彼らを見ながらも、イリスは別の事案に思いを致した。

(『ミラ』ね。まさかその名を、マクスウェルの使命とやらを遂行する人間に与えたなんて。よりによって、ミラさまの名を)

 イリスは遠くの天を仰いだ。
 2000年を経てなお鎮火しない心の炎が、より強く燃え上がっていた。






 エルはエリーゼと共に、仮住まいであるカラハ・シャールのシャール邸に帰り、宛がわれた部屋に入った。

 リュックサックを下ろし、帽子をサイドテーブルに置いて、ベッドにぽふんと横になった。

「今日は色々あってタイヘンだったね」
「ナァ〜」

 ルルはルドガーの飼い猫なのに、何故かエルに付いて来ていた。ルドガーが「連れてていいよ」と言ったのでそうしているが。

 ベッドの上で起き上がる。窓から星を見上げた。まるで夜空の中に、星とは異なる天体を見つめるように。


「約束…いっしょに…カナンの地に…ルドガーと…いっしょに…」


 エルは両手の平を強く、胸にある祈りを抱くように押し当てた。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ