暁 〜小説投稿サイト〜
イリス 〜罪火に朽ちる花と虹〜
Interview10 イリス――共食いの名
「その子はミラだ!」
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 幼女は一軒の家に入った。ルドガーたちもその家の前に駆けつける。

「僕の、家……? 何で」

 その家は小さな病院らしき設えで、看板には「マティス治療院」と書いてある。

「ジュードはあの子に心当たりないのか?」
「ない、はずなんだけど。さっきから妙に、どこかで見たような……」

 ジュードの語尾に被せるように、マティス治療院の一角が爆発した。

「なっ!?」
「童女であれさすが時歪の因子(タイムファクター)。派手にやってくれるじゃない」
「父さん、母さん!」
「大先生、エリンおばさん!」

 ジュードが一番にマティス治療院に駆け込んだ。二番手にレイアが続いた。ルドガーたちも急いで二人を追って治療院に駆け込んだ。


 院の中は煙が立ち込め、火のにおいが未だ残っていた。

 煤けた廊下に倒れているのは、看護士らしき女性。ジュードがその女性に駆け寄り、抱き起こした。

「母さん、母さん! しっかりして!」
「おばさん! ――まさかこれ、さっきの子が?」

 ジュードが彼の母親に治癒術を施し始めた。

 だが、治療を遮るように、奥の部屋から男のものらしき悲鳴と、重い物がひっくり返った音が聞こえた。

「――父さん?」
「ジュードっ、行ってあげてください」『お母さんはぼくらが治すからー』
「ごめん、頼んだっ」

 ジュードは歯噛みしたが、すぐ立ち上がって奥の部屋へ走った。

「ルドガーも行ってあげて。嫌な予感がするの」

 レイアがエリーゼと揃ってエリンを治療しながら言った。

「危ないと思ったらすぐ建物から出るんだぞ」
「ここは私が引き受けます」
「頼む、ローエン。――エル、ローエンから離れるなよ」
「うんっ」
「俺も行かせてもらうぜ」

 ルドガーはアルヴィンとイリスを後ろに、遅れて奥の部屋に踏み込んだ。


 部屋は強盗にでも遭ったように荒れていた。倒れた薬品棚やベッド。壁にいくつも残った大きな、魔物がつけたかのような爪痕。

 ジュードは部屋の奥にいた。眼鏡をした若い男を背に庇って構えている。
 驚いたのは、若い男が腕に赤ん坊を抱えていたことと、その男に長剣を向ける金蘭の髪の女の子だった。

「増援がいたの」
「ルドガー、避けて!」

 部屋の奥にいたジュードが叫んだが、間に合わなかった。

 女の子が掲げた掌に、青い魔法陣が浮かび上がり、魔法陣から大量の水が流れ出した。水流の勢いに勝てなかったルドガーとアルヴィンは、押し流されて背中を壁にしたたかに打ちつけた。

「アルクノア……しぶとい奴ら。黒匣(ジン)を持って私の前に出て来るなんて。命が惜しくないのかしら。ねえ、姉さん」

 部屋に女は彼女一人なのに、彼女はそう見えない何
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ