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滅ぼせし“振動”の力を持って
彼と家出の訳
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も始まるかあっ!!」
「! ああ、確かにそうだな」
「分かったらダッシュ! 猛烈にダーッシュ!!」
「おう!」


 先までの不快な表情は取れ、迷いのなく駆け出していく海童。

 そこでアドレナリンでも切れたか、碓は地面にドチャリと座り込んでしまった。

 ダメージはそこそこあったらしく、どうも無理して立ちあがったようだ。


「うぎぎ、あいつ強すぎんだろ……マジで痛いぜ……でもっ!」


 その後何故か笑顔になり、コレまたダメージが嘘のように立ち上がって、スキップしながら学園内へと向かっていく。


「これだけ重けりゃ秋センセーに見てもらえるぜ〜っ♪」


 エロパワーもここまで行くと、最早神秘としか言いようが無かった。







 碓と別れた海童はというと、先に帰ったらしいイナホを追いかけて、傘もささずに雨の降る道を走りぬけていた。

 無論、先に帰ってしまったイナホに追いつく為だ。


 だが、一番最初に見かけた人影はイナホでは無く、春恋の物だった。
 傘を差しながら小走りで辺りを見回し、何やら焦燥を募らせているのが窺える。


 向こうも海童に気がついたのか、速度を上げて彼の元に近付いてきた。


「カっちゃん!」
「ハル姉? 何で此処に」
「それが……子猫が逃げ出しちゃったのよ!」
「何?」


 アマノハラの麓で拾った子猫の話は一応海童も耳に入れていたのか、表情が険しい物へと変わっていく。

 何でも、少しの間目を離した隙に居なくなったようで、玄関から足跡がずっと続いていた為、恐らくは外に出たのだろうと皆で探している最中なのだとか。


「カっちゃんも手伝って! 何かあったら大変よ!」
「……ああ、わかった!」


 イナホの事をチラと頭に思い浮かべたか沈黙するも、此方は最悪命に関わるかも知れない事態。
 一先ずは此方を優先しようと、海童は頷き春恋とは別方向へと走り出した。

 だが……探すとはいっても、開いては人間の子供では無く子猫。

 行ける場所は人のそれより広範囲で、どの様な思考を持つかも分からないので、捜索は非常に困難……難航するのは確実だと言えた。


 それでも何かないかと考えた後、海童は一つ当たりを付ける。



(……アマノハラの麓に捨てられていたんなら……そこにいるか……?)


 元の飼い主が来るかもしれないと、放置された場所へ逆戻りしている可能性は、それこそ新たに拾って貰い手厚く迎えられて今では、それなりに低いかもしれない。

 が、前の人間が忘れられないかどうかは子猫によるし、どの道当ても無く探すよりはいいと、海童は一旦足を止めてアマノハラの方へと再び走り始めた。


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