第十二楽章 赤い橋
12-4小節
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ドガーだから。ルドガーを生かすためだから。
そのために代わりに死なねばならない人がいるなら、エルの望みの果ての責任だ。決して目を逸らしてはならない。
「……強い子ね」
ジゼルは憫笑し、そしてその表情を厳しいものへ変えてビズリーに向き直った。
「お願いいたします」
ビズリーが歩み寄ってきて、まるで大きな背中でジゼルを隠すように立った。エルからはジゼルの姿がほんの少ししか見えなくなった。
ビズリーの両腕が上がる。掌がジゼルの首に向かい――
ボギッ!
折れる音、だった。かくん、とジゼルの首が不自然に後ろに傾いだ。
ビズリーが手を離すと、ジゼルはあえなく地面に落ちた。長い黒髪がバラバラに散らばった。
エルはぺたんとその場に膝を突いた。
目は逸らさなかった。耳は塞がなかった。しかし、体は耐えきれなかった。足が萎えて立てない。
「見るな」
「――っ!」
「見てほしくはなかろう。歪んだ死に顔ならなおさらだ。ジゼルを哀れと思うなら、後はせめて美しかった記憶だけを刻んでおけ」
「……わかった」
幼いエルにも、ビズリーの言葉は全き正論に聞こえた。
すると、大きな手が伸び、エルの背中に回った。やっ、と条件反射的に逃げ出そうとしたが、ビズリーに通じるわけもなく、ビズリーは片腕でエルを抱き上げた。
本意ではなかったが、落ちないようにビズリーの肩にしがみついた。
ビズリーの足が、鮮やかな赤の《橋》を踏んだ。
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